アップル、中国でApp Store縮小余儀なくされる恐れ 規制強化策に応じる
アップルは中国で新規アプリ配信の条件として、中国政府への登録申請を義務付けた。アプリストア「App Store」の中国版では、これまでこうした規則が比較的「緩く」運用されてきたが、政府の規制強化に伴い、アップルも競合他社に追随する措置を取った。ロイター通信などが報じた。
すべてのアプリストアとアプリに申請義務付け
アップルは、開発者がApp Storeの中国版で新アプリを公開する際に、「インターネット・コンテンツ・プロバイダー(ICP)申請」を提出することを23年9月29日から義務付けた。
ICPとは、中国でウェブサイトを合法的に運営するために必要な登録制度で、中国・騰訊控股(テンセント)や中国・華為技術(ファーウェイ)などが運営するほとんどの地場アプリストアは、少なくとも2017年から順守している。
ロイターによれば、ICP申請するためには、開発者は中国に会社を設立するか、地場のパブリッシャーと連携する必要があり、これは多くの海外アプリ開発者にとって障壁となる。こうしたなか、アップルの緩いICP方針は、競合アプリストアよりもはるかに多くのモバイルアプリの配信を可能にし、巨大市場である中国でApp Storeの人気を高めるのに役立った。
しかし、中国では22年6月、サイバーセキュリティー法を所管する国家インターネット情報弁公室(CAC)が、アプリストア運営企業に事業内容の詳細を届け出るよう求めた。
加えて、23年8月、中国工業情報化省は、すべてのアプリストアとアプリ開発者に対し、事業内容を含む「アプリ申請書」を提出することを義務付ける新規則を発表した。
ロイターの報道によると、これを受け23年9月27日までに、テンセントやファーウェイ、中国アリババ集団傘下アント・グループ、中国・百度(バイドゥ)、中国・小米(シャオミ)、韓国サムスン電子などの計26のアプリストアが申請を済ませた。しかし、国家インターネット情報弁公室が9月27日に公表した申請者リストにアップルのApp Storeは含まれていなかった。
中国版App Storeの数十万アプリに影響
今回の中国政府によるICP申請義務化とアップルの対応は、中国版App Storeの数十万ものアプリに影響を及ぼすとみられている。
新規則の下では、新規アプリはすでに規則を順守する必要がある。既存アプリの猶予期限は24年3月末で、それまでに適切な申請がないアプリは罰則が科されるという。ロイターは、X(旧ツイッター)やTelegram(テレグラム)といった外国人気アプリへのアクセスに支障が生じる可能性があると報じている。
中国政府によるアプリ規制は、同国のiPhoneユーザーが、人気の西側SNSアプリをダウンロードできるという、「グレート・ファイアウオール(金盾)」(インターネット検閲システム)の抜け穴をふさぐことを意味する。XやTelegramのほか、「Instagram(インスタグラム)」や「Facebook(フェイスブック)」「YouTube(ユーチューブ)」「WhatsApp(ワッツアップ)」などが影響を受けることになる。
中国政府は長年、これらのウェブサイトへの接続を遮断しているが、アプリをダウンロードした中国のiPhoneユーザーは、VPN(仮想私設網)を介して国外のインターネットサーバーに接続し、これらのサービスを利用している。中国はVPNの利用を禁止している。だが、多くのユーザー、とりわけ若い世代はこの方法を利用していると、ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
英フィナンシャル・タイムズによると、中国は世界最大のモバイル市場で、260万以上のアプリが利用可能だ。消費者のアプリへの支出は、世界全体の40%以上を占めるとみられている。
アップルなどの外国アプリストア運営企業にとって中国は2つの点で課題があるとフィナンシャル・タイムズは報じている。1つは、中国当局が技術情報を開示するよう求める点。もう1つは国内インターネット検閲に協力するよう求めている点。後者はしばしば、外国企業の本国で批判の的になる行為である。
- (本コラム記事は「JBpress」2023年10月6日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)