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Appleのアプリストア成長鈍化、最低レベルで推移 利用者数・サブスク加入者数増加も販売額横ばい

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
出所:米Apple

米アップルは先ごろ、アプリ配信サービス「App Store」にとって2022年は記録的だったと明らかにした。1週間あたり全世界(175カ国と地域)で6億5000万人以上がApp Storeを訪れたという。

同社は毎年こうしたデータを公表している。1年前に公表したデータでは、21年のApp Storeへの訪問者数は同6億人だった。

また、22年のアップルのサービス全体における有料サブスクリプション(継続課金)サービスの加入者数は9億人以上で、前年の7億4500万人を大きく上回った。App Storeでのサブスク加入者数は、同社サービス全体の相当の部分を占めるという。

開発者への支払い600億ドル、前年と同じ

アップルは2008年にApp Storeを立ち上げて以来、22年末までに開発者に累計3200億ドル(約42兆3500億円)を支払ったとも明らかにした。この金額は21年末時点で2600億ドル(約34兆4100億円)だったので、22年は600億ドル(約7兆9400億円)を支払ったことになる。

これについて米CNBCは、App Storeの成長は止まった可能性があると指摘している。同様の方法で計算するとアップルが21年に開発者に支払った金額も600億ドルであり、22年は横ばいで推移したと考えられるからだ。

アップルはApp Storeの販売額から30%、または15%の手数料を差し引き、残りを開発者に支払っている。仮に開発者全員が30%を差し引かれた場合、22年のApp Storeの販売額は860億ドル(約11兆3800億円)になる。

仮に全員が15%を差し引かれた場合の販売額は710億ドル(約9兆4000億円)となる。22年におけるApp Storeの販売額はこの範囲内だと推測できる。

アップル「アプリ販売額はApp Store経済圏のごく一部」

ただ、App Storeにおけるアプリの販売額は、同アプリストアを取り巻く全体の経済圏と比較し、ごく一部にすぎないとも言われている。

アップルは21年に、「App Store経済圏」の実態を示すデータとして米コンサルティング会社アナリシスグループによる調査・分析結果を公表した。

それによると、最も販売額が大きいアプリのカテゴリーは、小売りやライドシェア、料理・食料品宅配、旅行などの「物理的な商品・サービス」で全体の約8割を占めた。

次に金額が大きかったカテゴリーは、音楽・動画配信や電子書籍、ゲーム、オンライン講座などの「デジタルグッズ・サービス」で全体に占める比率は13%だった。

アップルはこの「デジタルグッズ・サービス」でのみアプリ開発者やサービス運営企業から手数料を受け取っており、これがApp Storeの売上高となっている。例えば、有料アプリやアプリ内課金の場合、アップルの取り分は販売額の30%、サブスクサービスは、1年目が同30%で、2年目以降が15%となる。

App Storeを巡っては、配信や課金の仕組みが独占にあたるとして、人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズが提訴した。こうした批判をかわす狙いかアップルは21年1月に、App Storeで得た年間収益が計100万ドル(1億3200万円)以下の開発者を対象に手数料を15%に引き下げた経緯がある。

アップルは20年に公表したリポートで、「アップルから開発者に直接支払われた金額やアップルが受け取る手数料は、アプリを通じて販売された商品やサービスの売上高などを含んだ膨大な金額から見れば、ほんの一部にすぎない」と説明。App Storeがもたらす経済効果は、同社と開発者間の取引金額よりもはるかに大きいと強調した。

App Storeはアップルの収益エンジン

ただCNBCは、アップルが今回公表したデータは、App Storeの成長が減速したことを示しており、これは投資家にとって重要だと指摘する。なぜならApp Storeはアップルのサービス事業の中核部分であり、同社の収益エンジンだからだという。

22年9月末までの22会計年度におけるサービス事業の売上高は、前年度比14%増の781億ドル(約10兆3300億円)だった。増収率は21会計年度の27%から低下している。

20年と21年は新型コロナの感染拡大による巣ごもり需要の増加でアプリ市場が活況を呈した。現在は需要が一服したほか、金利の上昇や景気後退への懸念で先行き不透明な状況だとCNBCは報じている。

米モルガン・スタンレーのアナリストによれば、App Storeの売上高は22年6月から11月まで6カ月連続で減少した。App Storeの成長はサービス開始以来の最低レベルで推移したという。その一方で12月は増加に転じており、23年は改善が期待できるという。

  • (本コラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2023年1月12日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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