2022年のロシアにおけるIT(情報技術)への支出額は大幅に減少する見通しだと米ウォール・ストリート・ジャーナルが米調査会社IDCのデータを基に報じた

ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が続くなか、IT大手がロシア事業を停止する動きが広がっている。多くは米政府などが科した経済制裁に準ずる形で措置を決めた。

ロシアのIT支出、22年に1.5兆円減少する見通し

IDCは、22年のロシアにおけるIT支出額が前年の推計額312億米ドル(約4兆300億円)から、その約39%に当たる121億ドル(約1兆5600億円)減少し、191億ドル(約2兆4700億円)になると予測している。

担当アナリストによると、ハードウエアは供給不足に陥ることから最も支出額が減少するとみられている。今後は輸入ハードウエアの価格が上昇し、需要に影響を及ぼすという。

インテルやAMDなど、露メーカーへの供給を停止

ウクライナでの戦争はロシアのハードウエア事業を混乱させた。ロシアのハードウエアメーカーは、米半導体大手のインテルやアドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)から部品供給を受けられず、3月初旬以降ほとんど生産していないと、IDCは指摘する。

ロシア電子通信協会(RAEC)の主席アナリスト、カレン・カザリアン氏は、「ロシアにはハードウエアメーカーがあるものの、世界的なサプライチェーン問題によって生産が制約されている」と説明している。

露企業、米欧のソフトウエアに大きく依存

ロシアのIT企業幹部らも「経済制裁によりハードウエアが広範にわたり不足するだろう」と述べている。今後は西側製ソフトウエアのオープンソース版やロシア製ソフトに切り替える必要が出てくるが、その際にも困難な状況に直面するだろうと懸念している。

米マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コム、米グーグルなどのIT大手はいずれもロシアでのクラウドサービスの新規販売を停止した。これらの既存ユーザーは依然としてサービスを利用できる。ただ、今後サブスクリプション(継続課金)が更新されなくなる。西側IT企業の方針転換やロシア政府の規制強化によって突如遮断される可能性もある。

IDCによると、ロシアのクラウドサービス市場ではマイクロソフトのシェアが17%で最大。これにアマゾンの14%、米IBMの10%と続き、ロシア企業ヤンデックスのシェアは3%にとどまる。

ロシア政府は17年に、政府系企業に対し西側製ソフトウエアの使用をやめるよう義務づけた。だが22年時点でも多くが米欧のソフトウエアに大きく依存している。

モスクワに拠点を置くIT企業の幹部は「制裁がすぐにも解除されるとはほとんど誰も考えていない」と述べた。「ほとんどの人はこれを新しい現実だととらえており、私たちはそれに適応することになる。ソビエト連邦時代のようになるだろう」と懸念を吐露したという。

  • (このコラム記事は「JBpress Digital Innovation Review」2022年4月12日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)