コロナ禍でアップル製パソコン急伸、10〜12月期5割増 過去最高
米アップルは昨年、パソコンプロセッサーの内製化を打ち出したが、結果的にその戦略は、絶好のタイミングだったと、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。
伸び率、他の4社上回る 49.2%増
米調査会社IDCのレポートによると、2020年10〜12月期のアップルのパソコン出荷台数は、前年同期比49.2%増の734万9000台だった。
同四半期の出荷台数上位5社は、中国レノボ・グループ、米HP、米デル・テクノロジーズ、アップル、台湾・宏碁(エイサー)の順。アップルは4位で、シェアは8%にとどまる。だが、伸び率は上位5社の中で最も高かった。
別の米調査会社であるガートナーも最新レポートで、アップルの出荷台数が前年同期比31.3%増の689万3000台となり、伸び率が他の4社を上回ったと報告した。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アップルの出荷台数は四半期ベースで過去最高を更新した。
独自プロセッサーの最新Mac好調
アップルは20年11月に自社開発プロセッサーを搭載したパソコン「Mac」を3機種発表した。いずれも「M1」と呼ぶMac向けSoC(システム・オン・チップ)の第1弾を採用している。
製品ラインアップは、薄型ノートの「MacBook Air」と高性能ノートの「MacBook Pro」(いずれも13インチディスプレー)、そして、デスクトップ型「Mac mini」の3種。
消費者は、これらの新製品に飛び付いたようだとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
アップルにとって追い風となったのは新型コロナウイルス。パソコンの出荷台数は過去10年にわたり、前年割れか横ばいで推移していた。だが、20年は在宅勤務と遠隔学習の広がりで需要が回復した。
IDCによると、同年の世界パソコン年間出荷台数(全メーカー)は前年比13.1%増の3億260万5000台。この水準の伸び率は2010年以来だという。
また、20年10〜12月期は前年同期比26.1%増の9159万台。同四半期の上位3社(レノボ、HP、デル)の伸び率はアップルほどではないものの、いずれも2桁増で推移した。
移行計画着々と、次は高性能パソコン
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、パソコン市場の回復は、新型コロナウイルスの影響による一時的なものとみられている。だが、アップルは今後、プロセッサーの移行計画を着々と進めていく予定で、それが同社の強みになると報じている。
アップルは20年6月、Macの独自プロセッサー計画を明らかにした。第1弾製品群を発売した後、2年ほどかけてすべてのMacを自社製チップに切り替える。「共通の技術基盤を構築し、アップルの全ハードウエア製品で動作するアプリを開発しやすくする」(同社)という。
この計画について米ブルームバーグは、専門家が予想していた以上に野心的だと報じている。「アップルは自社の技術力に自信を持っており、強い意志で着実に計画を進めている」という。
すでに発売した「M1」チップ搭載の3製品は、アップルのパソコンとしては廉価な部類に入る。ブルームバーグによると、アップルはM1の後継となる新チップを開発中で、デスクトップの普及モデル「iMac」や高性能デスクトップ「iMac Pro」、デスクトップの最上位モデル「Mac Pro」などに搭載する計画。
「完成すれば、米インテル製チップを備える現行Macの性能をはるかに超えるパソコンになる」と専門家は話しているという。
中国TFインターナショナル証券の著名アナリスト、ミンチー・クオ氏は、アップル製品の市場動向やサプライチェーン情報に詳しいとされるが、同氏は高性能ノート「MacBook Pro」の新製品2モデルが21年に登場すると予測している。
同氏によるとアップルは21年に全く新しいデザインの14インチ型と16インチ型を発売する計画だという。これらの新モデルでは「MagSafe」充電ポートが復活し、キーボード上部のタッチスクリーン「Touch Bar」が廃止されると同氏はみている。
全製品部門と世界全地域で2桁の増収
アップルが21年1月27日に発表した20年10〜12月期の決算は、売上高が前年同期比21%増の1114億3900万ドル(約11兆6800億円)で、四半期として過去最高を更新し、初めて1000億ドルの大台を突破した。
主力のスマートフォン「iPhone」の売上高は同17.2%増、パソコン「Mac」は同21.2%増、タブレット端末「iPad」は同41.1%増だった(インフォグラフィックス)。アップルはすべての製品部門で2桁の増収を達成。世界の全地域で2桁増となった。
- (このコラムは「JBpress」2021年1月14日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)