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iPhone 12の遅れがスマホ市場に打撃、ファーウェイ首位陥落

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:アフロ)

 今年4〜6月期にスマートフォンの出荷台数で初めて世界1位になった中国の華為技術(ファーウェイ)が2位に転落した。

 米調査会社IDCが先ごろ公表したレポートによると、ファーウェイの7〜9月期の出荷台数は前年同期比22%減となり、同社として過去最大の落ち込みだった。

米政府の禁輸措置響く

 米ウォール・ストリート・ジャーナルは、米政府が9月15日に強化した同社に対する禁輸措置が響いたと報じている。

 制裁発動によって、半導体などをファーウェイに供給する米国の部品メーカーは、事実上すべてが米商務省からの許可を得られなくなった。これにより、ファーウェイにとって最大の事業である消費者向け電子機器の生産が減少した。

 また、中国国外の消費者は、新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化の影響で製品を買い控えた。米政府の禁輸措置によって、米グーグルの人気アプリを搭載できなくなったことも影響したと報じている。

小米、アップル抜き初の3位

 IDCによると、7〜9月期のスマートフォン出荷台数の上位5社は1位から、韓国サムスン電子、ファーウェイ、中国・小米(シャオミ)、米アップル、中国vivo(ビボ)の順。

 このうち、サムスンの出荷台数は前年同期比2.9%増の8040万台。シェアは22.7%となり、2四半期ぶりに首位に立った。同社にとって最大の市場であるインドで出荷台数が約4割増えたほか、2番目の主要市場である米国でも好調だったという。

 ファーウェイの出荷台数は同22%減の5190万台。同社は主力の中国市場でも同15%以上減少したほか、海外市場も不調だった。

 一方、シャオミは4650万台を出荷。同42%増と大幅増となり、初めてアップルを抜いて3位に浮上した。同社は中国のほかインド市場でも好調。インドでの生産能力は新型コロナウイルス感染拡大前の85%にまで回復した。

アップル、初の4位後退、原因は「iPhone 12」の遅れ

 アップルの出荷台数は、同10.6%減の4160万台。シェアは11.8%となり、初めて4位に後退した。IDCはその原因として、高速通信規格「5G」に対応した新モデル「iPhone 12」の発売が遅れたことを挙げている。

 7〜9月期の業界全体のスマートフォン出荷台数は同1.3%減の3億5360万台だった。IDCは当初、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から同四半期の出荷台数が前年同期比で9%減少するとみていた。

 しかし、世界中で経済の再開が進み、回復が予想よりも早かったという。

 回復が早かった国は、インドやブラジル、インドネシア、ロシアで、ぞれぞれのスマホ市場規模は、世界第2位、4位、5位、6位。

 一方で、世界1位の中国と、3位の米国を含む北米、そして西欧などの先進国市場はいずれも大きく落ち込んだ。これらはアップルの主力市場。iPhone 12の発売の遅れが回復の遅れにつながったと、IDCは分析している。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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