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アップルの独り勝ちだった4〜6月スマホ市場、サムスンや中国大手は大幅減もiPhoneは25%増

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 シンガポール本部の調査会社カナリスによると、今年4〜6月期の世界スマートフォン出荷台数は、前年同期比14%減の2億8500万台だった。新型コロナウイルス感染拡大対策として世界各地で敷かれた都市封鎖(ロックダウン)が影響し、この四半期も大幅減だった。

ファーウェイ、初めてサムスン抜き首位に

 出荷台数の上位5社は1位から 中国の華為技術(ファーウェイ)、韓国サムスン電子、米アップル、中国・小米(シャオミ)、中国OPPO(オッポ)の順。

 このうち、アップルを除く4社はいずれも台数を減らした。とりわけサムスンは同30%減と落ち込みが激しい。

 これにより、同5%減と比較的小幅な減少にとどまったファーウェイがサムスンを抜き、世界スマートフォン出荷台数ランキングで初めて首位に浮上した。ファーウェイとサムスンの出荷台数はそれぞれ、5580万台と5370万台だった。

 また、4位のシャオミと5位のオッポもそれぞれ10%減(2880万台)、16%減(2580万台)と、大きく減少した。

「iPhone 11」「iPhone SE」がけん引

 これに対し、アップルは4510万台を出荷し、前年同期から25%増加。その理由としてカナリスは、昨年9月に発売した「iPhone 11」と、今年4月に発売した普及モデル「iPhone SE」(第2世代)を挙げている。

 iPhone 11のアップルの全出荷台数に占める比率は約40%、iPhone SEは同28%で、この2モデルが同社のスマートフォン販売をけん引しているという。

 iPhoneの出荷台数は今年1〜3月期と比較しても増加している。iPhoneの4〜6月期の出荷台数が1〜3月期を上回ることは珍しいという。

 アップルがパンデミック(世界的大流行)による自宅待機にいち早く対応し、オンライン販売を強化したことも成功の要因だとカナリスは指摘している。

消費者の予算、パソコンやタブレットに

 別の調査会社である米IDCも同様のレポートを公表している。これによると、4〜6月期の世界スマートフォン出荷台数は、前年同期比16%減の2億7840万台で、過去最大の落ち込み。

 「都市封鎖がもたらした世界的な経済危機と失業の増加に加え、オンラインショッピングがあまり一般的ではない地域での小売店舗の一時閉鎖がスマートフォン販売に大きな影響を及ぼした」(IDC)

 また、在宅勤務や遠隔授業を余儀なくされた消費者がパソコンやタブレット端末などの他の機器に予算を振り向けたこともその背景にあると同社は分析している。

ハード利用が最高

 この分析はアップルの4〜6月期業績と一致している。この期間の売上高は前年同期比11%増の596億8500万ドル(約6兆3300億円)、純利益は同12%増の112億5300万ドル(約1兆1900億円)で、2桁の増収増益だった。

 iPhoneの売上高は264億1800万ドル(約2兆8000億円)と同2%の増加。

 一方で、パソコン「Mac」は同22%増の70億7900万ドル(約7500億円)、タブレット端末「iPad」は同31%増の65億8200万ドル(約7000億円)と、それぞれ大きく伸びた。

 また、Apple WatchやAirPodsなどの「ウエアラブル、ホームおよびアクセサリー」は同17%増の64億5000万ドル(約6800億円)だった。

 アップルのルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)は「四半期中、ハードウエア製品の利用台数がすべての地域で過去最高になった」と説明した。

  • (このコラムは「JBpress」2020年8月4日号に掲載された記事をもとにその後検証を重ね、最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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