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小さなAirPods大きな存在 アップル、新モデル21年前半発売か

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:Splash/アフロ)

 米アップルがワイヤレスイヤホンの新モデルを開発中だと、米ブルームバーグが報じている。普及モデル「AirPods」の第3世代と、上位モデル「AirPods Pro」の第2世代の発売を計画しているという。

「うどん」と揶揄されたデザイン刷新か

 普及モデルは、これまで「うどん」と揶揄されていた長いイヤホン軸が短くなり、耳の形に合わせて交換可能なシリコン製イヤーチップが付くという。

 バッテリー駆動時間は延びるものの、上位機種にある周囲の騒音を低減するノイズキャンセリング機能は搭載しないと、事情に詳しい関係者は話している。アップルはこの普及モデルについて、2021年前半に発売すべく検討を進めているという。

 一方、上位モデルであるAirPods Proは、従来イヤホン軸が若干短いデザインを採用していたが、新機種はそれが完全になくなり、より丸みを帯びたデザインになる見通し。耳によりフィットするように設計されており、現在、社内で試作機をテスト中だという。

 アップルがAirPodsの初代モデルを発売したのは2016年。2019年3月には無線充電に対応し、「ヘイ、シリ」の呼びかけでAI(人工知能)アシスタントが利用できる第2世代モデルを発売した。

 2019年10月にはノイズキャンセリング機能を備え、耐水性能を持たせた同Proを発売。これらの価格は、それぞれ、159ドルから(日本では2万2800円から)と249ドル(同2万7800円)。

ワイヤレスイヤホン市場で首位

 香港の市場調査会社カウンターポイント・テクノロジー・マーケットリサーチによると、今年アップルのワイヤレスイヤホン出荷台数は、8200万台に達する見通し。

 アップルはこの市場で35%のシェアを持つ首位で、中国の小米(シャオミ)や韓国サムスン電子(シェアそれぞれ10%と6%)がその後に続いている(ブルームバーグの記事)。

 また、米調査会社のIDCによると、今年4〜6月期における世界ウエアラブル機器の出荷台数は、8620万台で1年前から14.1%増加した。

 このうちイヤホンやヘッドホンなどの「ヒアラブル」機器が60%を占めており、伸び率は32.6%と高い。ウエアラブル機器市場はヒアラブルがけん引しているという。

 同四半期におけるアップル製ヒアラブルの出荷台数は2370万台で、同社は業界トップを維持していると報告している。

iPad上回る「ウエアラブル・ホーム・アクセサリー」事業

 アップルは今週、AIスピーカー「HomePod」の新モデル「HomePod mini」を発売した。また、ブルームバーグは、アップルがオーバーヘッド型ヘッドホンの市場投入も計画していると報じている。

 こうした製品はアップルの「ウエアラブル、ホームおよびアクセサリー」部門が手がけており、最近、急速に業績を伸ばしている。

今年7〜9月期の同事業の売上高は78億7600万ドル(約8200億円)。前年同期比21%増と大きく伸び、タブレット端末「iPad」の67億9700万ドル(約7100億円)を上回った。ブルームバーグによると、この部門の売上高は2年前から70%以上増加したという。

 アップルは、スマートフォンの新モデル「iPhone 12」シリーズから、イヤホンと電源アダプタを同梱しない方針とした。環境に関する目標の達成に向けた取り組みの一環だという。

 つまり、このモデルからiPhoneのイヤホンは別売りとなる。こうしたことから今後もAirPodsシリーズは好調に売れ、同事業の業績をさらに向上させる可能性があると、米CNBCなどは報じている。

  • (このコラムは「JBpress」2020年10月28日号に掲載された記事をもとにその後最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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