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アマゾン、従業員のコロナ感染者、米で2万人と公表

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムはこのほど、新型コロナウイルスの陽性が確認されたり、陽性が推定されたりした米国の従業員が1万9816人になったと明らかにした

 同社の物流施設や傘下の食品スーパー「ホールフーズ・マーケット」のデータを集計したもので、今年3月1日〜9月19日の累計。同期間における現場従業員数は流出人員も含めて計137万2000人。

 これを米国の感染者比率に当てはめると陽性者は3万3952人になるところ、実際は1万9816人にとどまり、42%少なかったとしている。

1日当たり5万件の検査

 アマゾンは、新型コロナウイルスの感染拡大が顕著になり始めた今年3月から、検査体制を強化してきたという。

 数十人の衛生検査技師を雇って研究チームを作ったほか、科学研究員やソフトウエア技術者、調達の専門職などで構成するチームも作り、安全対策に努めてきたとしている。

 アマゾンによると、同社は現在1日当たり数千件の検査を実施している。これを11月までに650施設で1日当たり計5万件を実施できるようにするとしている。

従業員の抗議受け、感染症対策強化

 今年はじめ、感染症対策が不十分だとしてアマゾンの物流施設の一部従業員が抗議活動を始めた。3月にはニューヨーク・スタテン島にある施設で50人以上がストライキを実施。

 施設内で新型コロナウイルスの感染が確認されたことを受けたもので、職場環境の透明性の欠如や安全対策の不十分さ、リスクに対する賃金の低さを訴え、施設の一時閉鎖を要求した。

 4月初旬にはミシガン州デトロイト近郊にある物流センターで抗議デモがあった。同下旬には、抗議活動が全米50以上の施設に広がったと報じられた。

 また、5月にはマサチューセッツ州など13の州・地域の司法長官がアマゾンとホールフーズ・マーケットの両CEO(最高経営責任者)に質問書を送り、感染状況に関する情報開示を求めた。

 こうした中、アマゾンは安全対策を強化してきた。サーモグラフィーカメラを導入するなどし検温を実施するとともに、施設内での消毒・洗浄の頻度を高め、マスクも支給した。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、その数は1億枚以上だという。

 さらに、6月には対人距離を確保するためのAI(人工知能)カメラシステムやウエアラブル機器を開発。7月には物流施設や店舗などの従業員らに総額で5億ドル(約520億円)超の臨時ボーナスを支給した。

世界従業員100万人突破

 一方で、アマゾンは急速に従業員を増やしている。3月と4月には北米の物流施設や配送ネットワーク、食品スーパーなどで計17万5000人を臨時雇用した。

 5月末にはこれら期間従業員の約7割に当たる12万5000人を正社員に登用すると発表。こうしてアマゾンの世界従業員数は6月末時点で87万6800人となった。

 同社はその後、北米の物流拠点で10万人を追加採用する計画を明かにした。9月に米国で開催したオフィス職の就職説明会には採用枠3万3000人のところ、38万4000件の応募があった。

 10月29日の2020年7〜9月期の決算発表では、期間を定めない従業員が前年同期比50%増の112万5300人と、100万人の大台を超えたと明らかにした。

  • (このコラムは「JBpress」2020年10月7日号に掲載された記事をもとにその後最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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