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アマゾンの宅配専用スーパーとは?コロナ禍で需要急増

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
写真出典:Amazon.com

 米アマゾン・ドット・コムは宅配専用の食品スーパーをオープンした。2017年に買収して傘下に収めた高級スーパーマーケットチェーン「ホールフーズ・マーケット」の新業態店だと説明している。

食料品のEC販売、昨年の3倍

 場所はニューヨーク市南部ブルックリンのサンセットパーク地区にある巨大複合施設「インダストリーシティ」。同社は食料品のネット販売に力を入れている。1年以上前から準備を進めており、これまで数百人を新規雇用したという。

 これらのホールフーズ・マーケットのチームは全員が食料品の宅配業務に従事する。迅速に注文を受け、商品を集め、配達の準備をするという。

 アマゾンによると、食料品のEC(電子商取引)販売は同社事業の中で最も急成長している。今年4〜6月期におけるその売上高は1年前の3倍に拡大した。

 新型コロナウイルス感染拡大によって在宅が増え、需要が急増した。今後もかつてないほどの需要増を見込んでおり、供給体制を拡充していくという。

食料品の配送能力2.6倍超に

 アマゾンの今年4〜6月期の売上高は前年同期比40%増の889億1200万ドル(約9兆3600億円)、純利益は同2倍の52億4300万ドル(約5500億円)で、いずれも四半期として過去最高を更新した。

 売上高の内訳は直営のEC事業が同48%増の458億9600万ドル(約4兆8300億円)、出店者からの手数料および物流サービス収入は同52%増の181億9500万ドル(約1兆9100億円)。

 ジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は決算発表の声明で「4〜6月も非常にまれな四半期だった」と述べていた。

 米経済ニュースのCNBCによると、アマゾンの物流網は4〜6月、新型コロナの影響で逼迫した。その対策として需要の高い生活必需品を優先して取り扱い、食料品の配送能力を2.6倍超に高めたという。

着々と進める実店舗展開

 一方で、アマゾンはこの分野の実店舗展開を着々と進めている。例えば、ホールフーズ・マーケットの店舗数は、2017年の買収時の約460店から500店以上に増えた。

 今年9月には「Amazon Fresh」と呼ぶ新たな食品スーパーをオープンした。こちらはロサンゼルス市ウッドランドヒルズにある。レジ精算不要のショッピングカート「ダッシュカート」を導入した初の店舗だ。

 CNBCによると、Amazon Freshの店舗面積は約3300平方メートルで、ホールフーズ・マーケットとほぼ同じ。

 だが、比較的安価な商品を置き、ホールフーズとは異なる顧客層を狙う。カリフォルニア州のアーバインやノースリッジ、シカゴのネイパービルでもこの店舗をオープンする計画だと報じている。

 また、今年2月にはレジ精算不要の食品スーパー「Amazon Go Grocery(アマゾン・ゴー・グローサリー)」をオープンしている。このスーパーは当初、シアトルで1店舗を営業するのみだったが、すでにワシントン州レッドモンドにも出店しており、計2店舗となっている。

 このほか、2018年1月にシアトルで1号店をオープンしたレジ精算不要のコンビニエンスストア「Amazon Go」は、現在コロナ禍で臨時休業中の店も含め全26店を展開している。

  • (このコラムは「JBpress」2020年9月3日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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