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アマゾンが住宅不動産に触手、米最大手と提携

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
画像出典:米Amazon.com

 米アマゾン・ドット・コムは先ごろ米国の大手不動産会社リアロジー・ホールディングスと提携し、「ターンキー(TurnKey)」と呼ぶ住宅購入支援サービスを始めることを明らかにした。

ホームサービスやAIスピーカーを提供

 リアロジーは、「センチュリー21」「ベターホームズ&ガーデンズリアルエステート」「コールドウエルバンカー」「サザビーズインターナショナルリアルティ」などのブランドを傘下に持つ米国最大手の住宅不動産会社。

 サービスは、アマゾンのeコマースサイトで購入希望者と、リアロジー傘下のこれら不動産会社と契約するエージェント(資格を得た個人の不動産業者)をマッチングさせるというもの。

 売買成立後は、顧客が入居する際、引越関連の各種ホームサービスやスマートホーム機器を提供し、それらの設置作業も行うという。

 住宅価格に応じて以下の金額に相当するサービスや機器を提供する。

  • 15万ドル(約1620万円)~39万9000ドル(約4310万円)の場合は、1000ドル(約11万円)相当
  • 40万ドル(約4320万円)~69万9000ドル(約7560万円)の場合は、2500ドル(約27万円)相当
  • 70万ドル(約7570万円)以上の場合は、5000ドル(約54万円)相当

 サービスの内容は、ハウスクリーニングや家具の組み立て、荷解き、ハンディマンサービスなど多岐にわたるという。提供する機器は「Echo」シリーズのAIスピーカーやスマートディスプレー、スマート玄関ドアチャイムなどだ。

まずは米国の15都市で展開

 アマゾンにとってのメリットは2014年から展開しているホームサービスを提供できること。同社製機器の普及にもつながると考えているようだ。

 このサービスは、当初カリフォルニア州のロサンゼルスやサンフランシスコ、ワシントン州シアトル、アリゾナ州フェニックス、コロラド州デンバー、ワシントンDCなどの米国の15都市で展開する(リアロジーの発表資料)。

 前述したリアロジー傘下の不動産ブランドと契約する約3000人のエージェントが参加するという。

不動産業界に広がる不安感

 アマゾンとリアロジーは今回の提携に関する金銭的条件などを明らかにしていない。しかし米ウォール・ストリート・ジャーナルは、顧客に提供するこれらサービスや機器の費用はリアロジーが負担すると伝えている。

 リアロジーはアマゾンのeコマースサイトを通じて見込み客をエージェントに紹介できるため、仲介手数料を多く取れるようになる。その収益で費用を賄う。

 昨今は、エージェントが「ジロー(Zillow)」などのオンラインの不動産売買マッチングサービスを利用して自ら見込み客を見つけるため、不動産会社の仲介手数料がかつてと比べて著しく減少している。

 一方でジローは、見込み客とエージェントをマッチングさせることで対価を得ており、毎年数億ドルの売り上げを上げているという。

 今回のアマゾンとリアロジーの提携が今後どのような展開になるかは分からないが、不動産業界全体に大きな不安感をもたらしそうだと、ウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。

  • (このコラムは「JBpress」2019年7月25日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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