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アマゾンの新サービスは不在時配達の解決策か、あの手この手で荷物をお届け

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
写真出典:Amazon.com

 米アマゾン・ドットコムは、顧客が不在時に、eコマースの荷物を顧客宅のガレージ内に配達するサービスを米国で本格展開している。

アマゾンのドライバーがガレージを開閉

 これは「Key for Garage」と呼ぶもので、同社が今年2月に明らかにしたサービスだ。

 顧客は、ガレージドア・オープナー(ガレージドアを自動開閉する装置)に、遠隔操作を可能にする専用の機器を取り付けておく。そして、アマゾンで商品を購入する際に、配達先としてガレージを選択する。

 すると配達時に、アマゾンのドライバーが専用端末を使ってガレージドアを開け、荷物を中に入れてドアを閉めて帰っていく。

 顧客に無料配布される専用アプリを使えば、ガレージドアの開閉状況を確認できるほか、遠隔でドアの開閉も行える。このほか、別売りの専用カメラを設置すれば、配達時の様子をリアルタイムで見たり、保存された動画を再生したりすることもできる。

留守宅内配達サービス「Key for Home」

 アマゾンは、顧客の不在時に、ドライバーが家の玄関ドアを同様にして開け、ドア内側に荷物を置いたあと(玄関には入らない)、施錠して帰る「Key for Home」を2017年10月に始めたが、ガレージ内配達は、このサービスを発展させたものだ。

 米国では不在時の再配達は行わず、荷物を玄関の外に置いていくのが一般的。だが、この方法では、盗難に遭ったり、雨に濡れるといった問題がある。

 そこで同社は、こうした不在時配達の仕組みを考えた。例えば、Key for Homeでは、(1)顧客宅の玄関ドアに取り付ける専用のスマート電子錠、(2)スマートフォン用アプリ、(3)宅内の玄関ドア付近に設置する専用カメラ、の3つを組み合わせ、セキュリティーの確保を図っている。

 ドライバーは、顧客宅の玄関前に到着した際、まず、専用端末で荷物段ボール箱に貼られた送り状をスキャンする。これにより、玄関ドアを解錠するよう要求が出される。

 すると、アマゾンのシステムが、その注文商品と、顧客宅、担当ドライバー、配達日時を照合し、すべてが合致しているかを確認。また、GPS機能でドライバーが玄関前にいるかどうかもチェックする。これらの条件がそろってはじめて、システムがドアを解錠する。

 ドライバーの様子は、宅内から玄関ドア周辺に向けて設置したカメラが動画撮影している。顧客はこれを、仕事場などの遠隔地から専用アプリを使ってリアルタイムで見たり、後に再生したりすることができる。

自家用車に届ける「Key for Car」

 アマゾンはこのほか、荷物の受け取り場所に、顧客の自家用車を指定できる「Key for Car」や、集合住宅や商業ビルの敷地内に荷物を届ける「Key for Business」も米国で始めている。

全米50都市で展開

 こうして同社はテクノロジーを活用し、不在時配達に取り組んでいる。前述したKey for Businessを除き、これらの個人向けサービスは、すべて同社の有料プログラム「Prime」の会員特典。その総称は「Key by Amazon」だ。アマゾンによると、Key by Amazonはすでに、全米50都市とその周辺地域で利用可能になっている。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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