アップルが参入する定額映像配信とはどんな市場?

(写真:ロイター/アフロ)

 米アップルは今年の秋、自前の定額制(サブスクリプション)映像ストリーミング配信を始める。売上高の6割を占める「iPhone」の販売が頭打ちになる中、同社はサービス事業の強化を図っており、その年間事業売上高を2020年までに500億ドル(約5兆5000億円)に拡大したい考えだ。

 しかし、映像配信サービス市場では、先行する米ネットフリックスや、米フールー、米アマゾン・ドットコムが独自制作のコンテンツに力を入れるなど、積極的に投資を行っている。また、新規参入企業も多数あり、市場競争はますます激化すると見られている。

3年連続でDVD/ブルーレイを上回る

 ただ、この市場はスマートフォンとは異なり、成長の余地は十分にあるようだ。ドイツの統計会社スタティスタによると、定額制映像ストリーミングの普及率が最も高い米州でも、その比率はまだ40%にとどまる。その次に普及率が高い欧州では、ほぼ20%、アジアではまだ十数パーセントという状況だ(図1)。

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 米国では2016年に、定額映像ストリーミングの売上高が、DVD/ブルーレイソフト販売を、初めて上回ったが、こうした状況は今も続いている。

米市場、2018年は30%増の1.4兆円

 映像コンテンツ・機器メーカーの業界団体、DEG(デジタル・エンターテイメント・グループ)の調査レポート(PDF書類)によると、昨年(2018年)の米国における、「定額映像ストリーミングサービス」の売上高は、129億1000万ドル(約1兆4000億円)に上った。

 これに対し、「DVD/ブルーレイソフト販売」の売上高は、40億3000万ドル(約4400億円)。前者が、前年比で30%増加したのに対し、後者は、同15%減少した(図2)。

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 米国では音楽CDの販売が落ち込み、それに代わって、定額音楽ストリーミングが急成長しているが、同様のことが映像の分野にも起きている。

 DEGによると、昨年の米国ホームエンターテインメントコンテンツ市場で、「定額制映像ストリーミング」と「DVD/ブルーレイソフト販売」に続いて金額が多かったのは、「オンデマンド販売」(24億6000万ドル)と「オンデマンドレンタル」(20億9000万ドル)。それぞれ前年から14%と6%増加した。

 このあと、「DVD/ブルーレイのレンタル」(自販機型/定額制郵送型/店舗型)が続いたが、いずれも2桁減と、大きく落ち込んだ。

映像産業を支える定額ストリーミングに活路を見いだす

 また、これらを、「デジタル配信(インターネット配信)」と「物理メディア(DVD/ブルーレイの販売とレンタル)」に分けて見ると、前者が約175億ドルで全体の75%を占める。そして後者は同25%の約58億ドル。

 定額ストリーミング、オンデマンド販売、オンデマンドレンタルから成る「デジタル配信」は一昨年に、初めて米国の映画館興行収入を超えたが、昨年は、その差がさらに広がった。そして昨年は、この中の定額ストリーミングの売上高のみで、映画館興行収入(119億9000万ドル、1兆3000億円)を上回った。

 こうして見ると、同国の映像産業は、今後もホームエンターテインメント市場に支えられて伸びていくようだ。そして、その中心的な役割を果たすのが、アップルが新規参入する定額ストリーミング。

 サービス事業の強化を図るアップルが、この分野に注目した背景には、こうした映像産業を取り巻く、ここ数年の市場環境の変化があるようだ。

  • (このコラムは「JBpress」2019年3月27日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)