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音楽CDとダウンロードの落ち込みが止まらない ストリーミング、ついに75%に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
画像出典:全米レコード協会(RIAA)Music Revenues Report

ストリーミングの売上高、28%増の34億ドル

 全米レコード協会(RIAA)がまとめた同国のレコード(録音)音楽販売統計(PDF書類)によると、今年上半期における売上高は、小売りベースで前年同期比10%増の約46億ドル(約5149億円)となった。

 このうち「ストリーミングサービス」の売上高は、前年同期比28%増の34億ドルで、米レコード音楽市場全体の75%を占めた。

 この比率は2016年に51%と、初めて過半を占めたが、2017年は65%へと上昇(図1)。そしてこのほど、ついに全体の4分の3を占めるまでになった。

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ダウンロード、27%減の5.6億ドル

 これに対し、米アップルのiTunes Storeに代表される「ダウンロード販売」の売上高は、5億6200万ドルで、前年同期から27%減少した。

 ダウンロードはもう何年も右肩下がりで推移しており、今年前半は過去10年超で最も低い水準へと落ち込んだ。その米レコード音楽市場全体に占める比率はわずか、12%にとどまっている。

物理メディア、25%減の4.6億ドル

 またCD、アナログレコード、ミュージックビデオなどの「物理メディア」は、前年同期比25%減の4億6200万ドル。こちらもダウンロードと同様に、過去数年で最も低い水準だ。

 CDが前年同期比41%減と激しく落ち込んだが、アナログレコードが同13%増加し、減少率がいくらか小幅にとどまった。ただし、物理メディアの米レコード音楽市場全体に占める比率はわずか10%である。

米レコード音楽市場最大の売り上げをもたらす定額課金制

 拡大を続けるストリーミングには、主に次の4つのサービスがある。

  • (1)定額課金制サービス(フルサービス):Spotify、Apple Music、Amazon Music Unlimited、TIDALなど
  • (2)定額課金制サービス(縮小版サービス):Amazon Prime Music、Pandora Plusなど
  • (3)広告付きオンデマンドサービス:YouTube、VEVO、Spotifyの無料版など
  • (4)インターネットラジオ/衛星ラジオ:Pandora、SiriusXMなど

 このうち、(1)(2)の定額課金制の今年上半期における合計売上高は、前年同期比33%増の25億5000万ドル。

 この定額課金制サービスがストリーミングサービスに占める比率は75%となる。

 つまり現在、米レコード音楽市場の売上高は、4分の3がストリーミングによってもたらされ、そのストリーミングは、4分の3が定額課金制によってもたらされている

 定額課金制は米レコード音楽市場最大の販売媒体となっている。

 そのフルサービス(1)の契約者数は4640万人で、1年前から48%増加。今年上半期では、1カ月当たり平均100万以上の新規契約があった。

アーティストにとっては厳しい時代に

 前述したとおり、ストリーミングの急成長に伴い、米国レコード音楽市場の規模は10%拡大した。しかし今は、レコード会社やアーティストにとって、厳しい時代だという。

 昨今、人々はスマートフォンやAIスピーカーを使って、さまざまなデジタルコンテンツを楽しむようになった。

 そうした中、アーティストがリリースする最新作品は、それら膨大な数のエンターテインメント・コンテンツと競い合わなければならないと、RIAAは指摘している。

  • (このコラムは「JBpress」2018年10月16日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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