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やはり、iPhoneは金を稼ぐ力が業界断トツ

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
iPhone8発売日17年9/22、渋谷表参道のApple Storeに入る顧客(写真:YUTAKA/アフロ)

 米アップルと言えば、時価総額世界トップの企業。主力製品である「iPhone」は、その利益率が高く、利益シェアは業界断トツであることは、知られている。

 そうした中、アップルの強みを示す新たなデータが、米国の市場調査会社ストラテジー・アナリティクスによって明らかになった。

販売台数は減少も売上高は増大

 それによると、昨年(2017年)10〜12月期における、iPhoneの売上高シェアは、業界全体の51%を占め、1年前の48.5%から拡大した。

 この四半期のiPhoneの販売台数は、1年前から1.2%減少している。10〜12月期の販売台数が前年実績を下回ったのは、これが初めてのことだ。

 しかし、価格が999ドルからと、高額になった「iPhone X」によって、シリーズ全体の平均販売価格が引き上げられた。その金額は796ドルと、1年前の695ドルから15%上昇し、過去最高になった(図1)。

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 このことが、売上高の増加と、シェアの拡大につながったと、ストラテジー・アナリティクスは指摘している。

サムスンの3倍、ファーウェイの7倍

 ストラテジー・アナリティクスの推計によると、昨年10〜12月期におけるiPhoneの売上高(卸売価格ベース、以下同じ)は、614億ドル(約6兆5200億円)。

 一方、スマートフォン業界全体の売上高は1202億ドル(約12兆7700億円)だった。

 つまり、iPhoneの売上高は、業界全体の51%を占め、韓国サムスン電子や中国ファーウェイ(華為技術)をはじめとする大手スマートフォンメーカーを含む、世界に無数にあるメーカーの合計を上回った(図2)。

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 ここで、他社のデータを見ると、例えば、サムスンの10〜12月期におけるスマートフォン売上高は、189億ドル。ファーウェイは84億ドルだった。

 iPhoneは、この期間、サムスンの3倍以上、ファーウェイの7倍以上の金額を稼いだというわけだ。

平均販売価格でも他社を大きく上回る

 もう1つの興味深いデータは平均販売価格だ。前述したとおり、iPhoneシリーズの10〜12月期における平均販売価格は、796ドル。

 これに対し、サムスンは254ドル。ファーウェイは205ドル。スタティスタによると、これら以外のメーカーの平均販売価格は、さらに低い152ドルになる。

 販売価格が、大きく上昇したにもかかわらず、iPhoneは10〜12月期に、世界市場で7731万6000台を売り上げた。

 一方で、この期間における出荷台数ベースのiPhoneのシェアは2割弱。これが金額ベースになると、いきなり5割を超えてしまう点が、アップルの強みと言ってよいだろう。

 「iPhoneは、信じられないほどの金を生み出すマシーンだ」と、ストラテジー・アナリティクスはこのレポートで結論付けている。

(このコラムは「JBpress」2018年2月21日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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