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アマゾンが計画中の音声広告とは?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドットコムは、同社のAI(人工知能)アシスタントサービス「Alexa」に、広告を導入することを検討しているようだ。

P&Gなどの米企業と協議

 同社はかつて、Alexaで検索広告の事業を展開する計画について示唆していた。だが、これまで何ら具体的なことは明らかになっていない。

 ところが、最近になってアマゾンは、米日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブルやクロロックスなどの数社と協議していると、米CNBCは伝えている。

 このことは、アマゾンが、音声広告事業の立ち上げを準備していることを意味しており、早ければこれが今年(2018年)にも始まる可能性があると、事情に詳しい関係者は話している。

 その内容は、Alexaで企業の商品を宣伝するというもの。ただし宣伝と言っても、「Echo」などのAlexa対応AIスピーカーから、ラジオCMのようなものが流れてくるのではない。

 利用者がAlexaのショッピング機能を使って商品注文する際に、お薦めの商品ブランドを提案するのだという。

eコマースサイトで展開中の広告事業を音声サービスで

 Alexaを使ったショッピングでは、利用者が購入したい商品について尋ねると、売れ筋の商品ブランドを提案する機能が用意されている。

 米ザ・バージによると、今のところこの機能は、アマゾンがコンピュータのアルゴリズムを使って商品を提案しているに過ぎず、アマゾンはメーカーから広告料を受け取っていない。

 一方で、アマゾンはeコマースサイトで、「スポンサーリンク」や「スポンサープロダクト」といった広告事業を展開している。

 これらはいずれも、利用者が入力した検索キーワードや閲覧内容に関連する、スポンサー企業の商品を検索結果ページや商品詳細ページに表示するもので、同社はスポンサー企業から広告料を受け取っている。

 これと同様に、アマゾンは、音声アシスタントでも、スポンサーの商品を提案し、その広告料を収入源にするという狙いのようだ。

ネット広告市場の勢力図に変化をもたらすか?

 EchoをはじめとするAIスピーカーが、今後さらに普及することが見込まれる中、スポンサー企業は、次世代のショッピングサービスにおいて、自社ブランドが取り残されてしまうのではないかと危惧しているとCNBCは伝えている。

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 ただ、音声サービスでは、あまり多くの商品を読み上げると、使い勝手が悪くなる。そのためスマートフォンやパソコンの画面のように、数多くの商品を提案できない。

 おそらく、音声サービス上の限られた広告スペースをめぐって各社が競い合うことになるのかもしれない。

 果たして、アマゾンは今回のCNBCの報道のとおり、2018年中にも音声広告事業を始めるのだろうか。

 もし、利用者に煩わしさを感じさせない形で、音声広告が実現すれば、ネット広告市場の勢力図に変化が表れるかもしれない。

 米国の市場調査会社eマーケターの推計によると、2017年の米国におけるネット広告売上高は、グーグルが首位で、フェイスブックがそれに次ぐ規模。

 このあと、マイクロソフト、オース(米ベライゾン傘下の米AOLと米ヤフーの中核事業を統合した企業)と続き、アマゾンは5位になっている。

(このコラムは「JBpress」2018年1月5日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報などを加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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