まだこんなにも規模が小さいVR/ARの市場

(写真:ロイター/アフロ)

 工場での組立作業や屋外における調査業務、教育や介護の現場、医療など、さまざまな産業分野で、その可能性が期待されている仮想現実(VR:virtual reality)と拡張現実(AR:augmented reality)。だが、今のところその市場規模はごく小さなものにとどまっているようだ。

わずか210万台、ウエアラブルの10分の1以下

 米国の市場調査会社IDCがこのほど公表した、VR/AR用ヘッドセットの市場レポートによると、今年4~6月期におけるこれら機器の世界出荷台数は、210万台だった。

 これに対しウエアラブル機器(スマートウオッチなど)の同じ期間における世界出荷台数は2630万台(IDC調べ)。つまりVR/AR用ヘッドセット市場の規模は今のところ、ウエアラブル機器の10分の1以下にとどまっている。

 それもそのはず、VR/AR用ヘッドセットは、まだ、そのほとんどがゲームなどのエンターテインメント向け。市場は限定されている。

 IDCがまとめた4~6月期のメーカー別出荷台数は、韓国サムスン電子が56万8000台でトップ。これにソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が51万9400台、米フェイスブック傘下のオキュラスVRが24万6900台で続いている。

 そしてこれらメーカーの製品はいずれもエンターテインメント向けで、上位3社を合わせた市場シェアは6割を超えているという状況だ。

VR/ARヘッドセットのメーカー別世界出荷台数(2017年4~6月期)
VR/ARヘッドセットのメーカー別世界出荷台数(2017年4~6月期)

データ出典:米IDC/インフォグラフィックス出典:ドイツStatista

VRは98%、ARは2%

 ご存じの方も多いと思うが、VRは、目の前にある実際の場面から離れ、完全にデジタル世界に没入するという技術。これを実現する製品には、サムスン の「Gear VR」、オキュラスVRの「Oculus Rift」、ソニーの「PlayStation VR」などがある。

 一方のARは、目の前の現実の環境にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術だ。例えば、工場などの作業現場でメガネ型ヘッドセットを使って逐次マニュアル手順などを表示すれば、業務効率は大幅に向上する。

 こちらの例としては、米グーグルの親会社であるアルファベット傘下の先端技術研究「X」が、「グラス・エンタープライズ・エディション(Glass Enterprise Edition)」という業務向けヘッドセットを開発している。

 しかし、今回のIDCのレポートによると、今年4~6月期に世界で出荷されたVR/AR用ヘッドセットのうち、VR用の比率は98%強で、AR用は残りのわずか2%弱。

 ARは、昨年大ヒットした「ポケモンGO」によって、すでに一般消費者に身近なものになったと言われている。

 しかしIDCによると、AR用ヘッドセットはまだ、収益性の高い一部の産業分野で、企業向け製品として開発資源が投入されているのみ。この状況は今後もしばらく続くのだという。

まずはスマホ用ARアプリが続々登場

 ARは、まずスマートフォンで普及すると見られている。それを後押しするのはアップルとグーグルだ。

 アップルは、まもなくリリースするモバイルOS(基本ソフト)の新版「iOS 11」で、AR用アプリの開発を支援する「ARKit」を導入する。グーグルも同様に、先ごろ、Android用のARプラットフォーム「ARCore」を発表した。

 こうしたスマートフォン2強の動きにより、これから来年にかけて、スマートフォン用ARアプリが続々登場するとIDCは予測している。

 消費者向けARはまず、こうしたアプリが流行し、その後、メガネ型ヘッドセットの製品化へとつながると、IDCはその道筋を予測している。

 しかし、それでもヘッドセットがある程度量産化され、手頃な価格になるまでには、しばらく時間がかかるだろうと、同社は厳しい見方をしている。