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アマゾンとアップル、膠着状態ようやく解消、「Amazonビデオ」が「Apple TV」で始まる見通し

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米アマゾン・ドットコムの映像配信サービス「Amazonビデオ」が、米アップルの映像配信端末「Apple TV」で利用できるようになる見通しだと、複数の米メディアが伝えている。

Apple TV向けのアプリを開発中

「現在アマゾンは、Apple TV向けAmazonビデオ用アプリを開発中で、このアプリは今後数週間以内にApple TV内に登場する」と、あるアプリ開発者の問い合わせに答え、アマゾンのサポート担当者が述べたのだという。

これにより、映像配信サービスや映像端末を巡るアマゾンとアップル間の行き詰まり状態が、ようやく解消されそうだと、米フォーブスなどは報じている。

これらの報道によると、今後Amazonビデオが利用できるようになるのはアップルが今年10月に発売した第4世代のApple TV。この新モデルはアップルのアプリ配信サービス「App Store」に対応している。

この仕組みにより、コンテンツ提供者はアプリを通じ、Apple TVのユーザーに映像配信サービスや、ゲームなどを提供できる。今回、これにアマゾンも参加するということのようだ。

Apple TV以外の多様な機器で利用可能

Amazonビデオはこれまで、アマゾンの映像端末「Amazon Fire TV」「Fire TV Stick」やタブレット端末「Fireタブレット」、ウェブブラウザー、ソニー製の対応テレビやゲーム機など様々な機器で視聴できたが、Apple TVでは利用できなかった。

その理由については定かではないが、アマゾンとアップルの交渉が行き詰まっていたのではないかとの観測が流れている。

一方でアマゾンは、モバイル端末用のAmazonビデオアプリを配信しており、これにはアップルのiOS向けアプリもある。これによりアップルのユーザーは、iPhoneやiPadでAmazonビデオを見ることができる。

また、iPhoneなどのiOS端末ユーザーがApple TVも持っていれば、「AirPlay」と呼ばれる機能を使って、コンテンツをApple TVにストリーミング転送できる。

これによりテレビの大画面でAmazonビデオを楽しむことができる。ただしこの方法では第4世代Apple TVに備わる、複数サービスにまたがる検索機能は利用できない。

アマゾン、競合製品を閉め出しか

アマゾンは今年10月、同社のネット通販サイトでApple TVの販売を中止した。同社はこの時併せて米グーグルの映像端末「Chromecast(クロームキャスト)」の販売もやめている。

その際、アマゾンは「これらの他社製端末でもAmazonビデオが利用できるとの誤解を招く恐れがあるからだ」と説明していたが、これについて多くのメディアは「競合する製品を自社の小売りサイトから閉め出した」と報じていた。

今回、Apple TVでAmazonビデオが始まれば、この説明は成り立たなくなるため、アマゾンはApple TVの販売を再開するかもしれないと、アップルインサイダーなどの米メディアは伝えている。

JBpress:2015年12月2日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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