Yahoo!ニュース

アマゾン、ついに自社のスマホを発売か? 4月中に量産開始と米メディアが報道

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

ウォールストリート・ジャーナルは4月11日付の記事で、米アマゾン・ドットコムが今年後半にも自社ブランドのスマートフォンを発売すると伝えた。

6月末ごろに製品を発表したあと、9月末までに出荷を開始し、年末商戦に間に合わせる計画だという。

まずは60万台を生産、部品メーカーにはジャパンディスプレイも

同社が自社ブランドのスマートフォンを開発しているという噂はこれまでにもあった。

だがウォールストリート・ジャーナルは今回事情に詳しい関係者の話として、アマゾンは今月中にも量産を開始する意向と伝えている。アマゾンは部品メーカーの1社に対し、すでにそのことを告げているという。

当初の生産台数は60万台。アマゾンは2社のディスプレイメーカーを確保しており、そのうちの1社は米アップルのアイフォーン5sと同5cにディスプレイを供給しているジャパンディスプレイ(産業革新機構・ソニー・東芝・日立製作所の中小型液晶合弁会社)。

ただし、ジャパンディスプレイはウォールストリート・ジャーナルの取材に対しコメントを避けている。また事情に詳しい関係者は、製品性能などに懸念があれば、計画は変更される可能性があると話している。

目の動きを検知するカメラ/センサーを搭載

世界のスマートフォン市場は、出荷台数が首位の韓国サムスン電子と、2位の米アップルが市場を支配しており、両社を合わせた世界シェアは約47%となっている。

そこでアマゾンは、製品の差異化を図ってライバルに対抗するという。同社が開発している端末は、以前の報道の通り、特別な眼鏡を用いることなく3D画像を表示できるディスプレイを備えているという。

本体前面には4つのカメラとセンサーを内蔵し、利用者の視線の動きや、端末と顔の距離や動きを検知する。これにより、画像のズームを自動的に行う。本体を動かすことでテキストや画像を操作することも可能という。

これが具体的にどのように動作するのかは不明だが、アマゾンは利用者がテキストをタイプ入力することなく、情報を探せるような機能を考えているようだ。

例えば4月初めに米国で販売を開始した映像配信端末「ファイアTV(Fire TV)」には、音声検索機能が付いている。付属のリモコンに向かって映画のタイトルなどを話すと、検索結果をテレビ画面に一覧表示する。

また同じく4月初旬に発表した「アマゾン・ダッシュ(Amazon Dash)」は、アマゾンのショッピングカートに商品を追加できるバーコードリーダーで、こちらにも音声検索機能が付いている。パソコンやスマートフォンでテキストを打つ必要がないと、アマゾンはその簡便さをアピールしている。

まずは開発者に製品を披露、アプリ開発を促進

アマゾンについてはかねて、「Lab126」と呼ばれる研究開発部門でハードウエアを開発していると報じられていたが、今回の報道によるとここ最近の同社はこれまで以上にハードウエア開発に力を入れている。

その狙いは、利用者データの利用。

例えば誰もが毎日持ち歩くスマートフォンはアマゾンに重要なデータを与えるという。これには利用者の位置情報やアプリケーションのダウンロード履歴などがある。これらの情報は、電子書籍、映画コンテンツ、日用品といった分野で同社に新たな販売機会をもたらすとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

またアマゾンは、アプリの開発者を重視しているようだ。同社は最近、米カリフォルニア州サンフランシスコと、本社がある米ワシントン州シアトルで開発者を招待し、開発中のスマートフォンを披露した。

招いたのは同社が厳選したアプリ/ソフトウエア開発者。会場は警備員を配備したホテルのスイートルームだったとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

JBpress:2014年4月15日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

小久保重信の最近の記事