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「金正恩は終わる」予言も…北朝鮮国民がハマる占い師たち

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正日総書記の死を悲しむ人々(写真:KRT/ロイター/アフロ)

北朝鮮では「迷信」が刑法で禁じられている。迷信の最たるものとしては宗教があり、中でもキリスト教に対しては苛烈な弾圧が加えられている。

内容もわからずに、ただ聖書を持っていただけの女性が処刑にされた事例もあったほどだ。

同じ迷信の類にされる「占い」も違法行為であることには変わりないが、キリスト教ほどのタブーではなく、高位幹部から庶民に至るまでハマる人が少なくない。特に今のような生活の苦しい時期ほど、占いが流行る。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、2016年頃には金正恩氏の運は2019年に尽きるという、「金正恩2019年終末説」が流布したこともあった。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、清津(チョンジン)在住のある人は最近、亡くなった家族が何日も続けて枕元に立ったことで不安を覚え、近所の占い師を訪ねた。ところが、占い師の家の前には夜明けから行列ができており、しばらく待ってやっと20ドル払い、占ってもらうことができたという。

朝鮮では昔から「解夢」と言う夢占いが行われているが、死んだ人が枕元に立つ夢は、状況によって吉とも凶とも取れる。そのため、不安を覚えて占い師のもとに駆け込むのだという。

北朝鮮ではコロナが明けた後も、人々の暮らしは苦しいままだ。多くの人が現金収入を得ている市場に対して、国が抑制策を取り、余剰農産品や家内制手工業の製品などを除き、あらかたの商品の販売を禁じてしまったからだ。

そんな状況で占いにすがる人が増えている。遠方にいく用事のある人は、旅立っても問題ないかを尋ねる。安全部(警察)や保衛部(秘密警察)からの嫌がらせのような取り締まりに苦しめられている人は、厄がついていないのかを尋ねる。

占いをしたことが発覚すれば実刑判決を受けかねないが、未来が不透明な中、頼れる者は占い師しかいないのだ。

市内の人民班(町内会)では今月10日、迷信行為の蔓延の深刻さを説き、根絶されるまで掃討作戦が行われるとの話があったが、市民からは反発の声が上がった。

(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

「首領(金正恩総書記)と祖国だけを信じて従順に生きろというが、それは座して死を待てということだ」(清津市民)

情報筋も「暮らし向きがよくなれば、迷信行為は自然となくなるだろう。国は、迷信にすがる人々を取り締まる前に、なぜ人々が迷信に頼るしかないのかを見てほしい」と話している。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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