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北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の兵士(デイリーNK)

 北朝鮮北部にある両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)は、故金日成主席が抗日パルチザン活動を繰り広げ、北朝鮮の正史では故金正日総書記の生まれ故郷とされる「革命の聖地」だ。中国との国境に接し、外国人の目にも触れやすいことから、昨今の都市大改造計画で新たな町へと変貌を遂げた。

 その三池淵で、2人の女性の行方を巡り、大騒動が起きている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

 件の女性2人は、刑期半年以下の軽犯罪者が入所する三池淵市労働鍛錬隊で受刑していた。密輸などのため中国キャリアの携帯電話を使っていたところを摘発され、本来なら重罪になるところを、ワイロを使って大幅な減刑に成功した結果だ。

 北朝鮮は中国キャリアの携帯電話の使用を「スパイ行為」と見なし、厳しく取り締まっている。逮捕されれば、普通ならば拷問をともなう取り調べを受ける。昨年1月には、咸鏡北道保衛局(秘密警察)に逮捕された30代女性が太さ7センチもあるこん棒で殴打されて昏倒し、担ぎ込まれた病院で死亡する事件があった。

(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

 また、拷問を耐え抜いたとしても、スパイ罪に問われれば最高刑は死刑だ。

 三池淵の女性2人はそうした危機からは脱したが、今月初めごろ、忽然と姿を消した。鍛錬隊に入って数週間で看守の安全員(警察官)と仲良くなり、警戒心を薄れさせた。そして、作業時間に「水を汲みに行く」と言って出ていったまま帰ってこなかったのだ。

 この脱獄事件で、地域全体が上を下への大騒ぎとなった。中国への国境に接しているため、脱北する可能性が非常に高いからだ。当局は、女性2人はまだ国境を越えておらず、山の中や知人の家に身を隠していると見ている。普段から中国キャリアの携帯電話を使っていたことから、警戒態勢がいつ緩められるかを熟知し、隙を見て中国の貿易業者と連絡を取り、脱北を試みるものとにらんでいるのだ。

 実の姉妹のように仲がよく、苦しい中でも手を携えて耐え忍ぶ2人の姿を見てきた地域住民は、「どうか捕まらずに脱北に成功してほしい」と祈るような気持ちで見守っているという。

 2人が脱北に踏み切った理由については「鍛錬隊から無事に出られても、生きていくには中国との商売しかない。捕まって殺される危険性はどこまでもつきまとう。そうした状況に追いつめられ、イチかバチかの賭け(脱北)に出たのではないか」との声が聞かれる。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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