韓国で昨年施行されたソウル市の学生人権条例には、学生は服装、頭髪など容貌において自分の個性を実現する権利を持ち、学校や教職員はそれを規制してはならないと定めている。「上の者が下の者を善導する」というパターナリズムの時代は終わったといことだ。

 さて、一方の北朝鮮だが、未だにパターナリズム全開だ。異色的(外国の文化の影響を受けたもの)な文化は資本主義的で、社会を蝕むから排除してしまえという理屈だ。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、恵山(ヘサン)市内の高級中学校(高校)で起きた一件を伝えた。

 両江道、恵山市当局と社会主義愛国青年同盟(青年同盟)は、糾察隊(取り締まり班)を立ち上げ、初級中学校(中学校)と高級中学校の生徒の服装とヘアスタイルの取り締まりに乗り出した。

 それに運悪くひっかかったのは、恵花(ヘファ)高級中学校2年生の女子学生5人だ。彼女らは髪を染めていたのだが、それが「資本主義遊び人風を助長する」という理由で取り締まられ、恵山市青年同盟の糾察隊室に連行されてしまった。

 その中には、クラスの初級団体委員長など、熱誠者と呼ばれ体制への忠誠心が高いとされる生徒も含まれていた。他の生徒の模範となるべき彼女らが、非社会主義行為を行ったということで、さらに大きな問題へと発展してしまった。

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 情報筋によると、卒業者がこのような取り締まりにひっかかり、処罰を受けたことはあったが、高級中学校の生徒が取り締まられた今回のケースは非常に珍しいとのことだ。当局が、若者に対する思想教育に力を入れる中、見せしめにされたのかもしれない。

 結局、彼女らは、青年同盟に毎日呼び出され、朝から晩まで批判書を書く処分を受けた。彼女らの担任教師も同様の処分を受けた。

 このようなヘアスタイルやファッションの取り締まりは以前から行われているが、それが続いているということは、取り締まりがいかに効果がないかを示している。

 恵山では、コロナ鎖国などにより深刻な食糧難に陥り、5月に行われたロックダウンでは、餓死者が続出した。そんな中で行われた今回のヘアスタイル取り締まり。国民一人ひとりの命を大切にすることより、思想の乱れによる体制のゆるみを警戒するという、優先順位を激しく間違っているのが、北朝鮮という国だ。