今月から始まった朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の夏季訓練。当局は「部隊が自主的に戦争準備を行い、党の勝利的前進を武力で担保しなければならない」と訓練の意義を強調しているが、当初から拍子抜けするような出来事が起きている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNKの朝鮮人民軍内部の情報筋は、道内に駐屯する第8軍団が、訓練初日から大混乱に陥った。今月1日の午前11時ごろ、軍団司令部の変圧器が爆発し、部隊全体が停電となったのだ。

ところが、同様の事故が頻発していたことから、内部は「待てばそのうち復旧するだろう」と気楽に構えていたが、時間が経つにつれある問題に深刻な影響を及ぼしてしまった。その問題とは「食事」である。

訓練に参加した兵士、独身の軍官(将校)など4000人は、軍団内の食堂で食事を取ることになっているが、停電のため炊事ができなくなってしまったのだ。内容は粗末であるとはいえ、食事は兵士らにとって唯一のたのしみであるだけでなく、栄養失調が蔓延する軍隊内では生命線そのものでもある。

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訓練の指導で現地にやってきていた軍の総参謀部、総政治局、国防省、保衛局(前の保衛司令部)などのお偉方が、この光景を目の当たりにして、「薪と釜を使って飯を炊け」と怒鳴り散らしたようだ。

ところが、釜の数は足りず、火の調節もうまくいかず、午後11時になってようやく幹部招待所から順番に食事が提供され、末端の兵士が食事にありつけたのは翌日の午前1時になってからだったという。そのうえ、出されたのは焦げ臭い粥だけだった。

ただ、食事の問題は停電のせいだけではない。訓練指導に当たる国防省の幹部から「訓練初日から飯を食わせなくてどうするのか。戦時予備物資の乾パン、果物、きゅうりの缶詰でも出せ」との指示が下されたが、それすら実行に移せないほど、倉庫に充分な食糧がなかったというのだ。

軍の食糧事情が劣悪なのは今に始まったことではない。補給の貧弱さを補うため、各部隊では副業地と呼ばれる畑で野菜を栽培しているものの、それだけでは足りず、兵士たちは常に腹をすかせている。そのため、農場や民家を襲撃することもしばしば発生する。

食糧供給元となっている協同農場の非効率的な運営、肥料の不足などによる凶作、輸送過程での横流しなど、その原因は複数存在し、金正恩総書記が兵士の食事を改善せよとの指示を下しても、一時的な改善にとどまっている。