国境警備隊が強盗に変身…食糧難の北朝鮮で治安悪化
北朝鮮の西海岸一帯では、早どれのジャガイモが実りつつある。3月から6月の「ポリッコゲ」(麦の峠)と呼ばれる春窮期に終わりを告げるのが麦とジャガイモの収穫開始だが、早生種はそれに先駆けて収穫できる。ところが、あまりの食糧難のひどさに、泥棒が多発しているという。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
中国にほど近い平安北道(ピョンアンブクト)龍川(リョンチョン)の情報筋は、夏至(6月20日)過ぎに収穫すべく畑に植えておいたジャガイモが先週、半分ほど盗まれてしまったと述べた。
残りのジャガイモも盗られまいと、家族が交代で午前4時まで寝ずの番に立っていたが、引き上げた直後にすべて盗まれてしまった。
1日に数軒がジャガイモ泥棒の被害に遭っている。それも状況が昨年とは若干異なっているという。
(参考記事:「気絶、失禁する人が続出」北朝鮮、軍人虐殺の生々しい場面)
「去年は軍の兵士がコソコソとジャガイモを盗んでいったが、今年は3〜4人1組で、鎌と麻袋を担いで周り、実りが良さそうなジャガイモ畑を見つけたら、番をしている人を脅して、ジャガイモを奪い取る」(情報筋)
かつては軍の中でも経済的に恵まれていた国境警備隊だが、民間人と結託して密輸や脱北を幇助することが厳しく禁じられ、今では食べるものにも困るような有り様だ。それで、ジャガイモやトウモロコシが実る季節になれば、民間人の畑で盗みを働く。それが今年からは、鎌で相手を脅かす強盗を働くようになり、村の人々は凍りついてしまいなすすべもなく、作物を奪われてしまう。
平安南道(ピョンアンナムド)徳川(トクチョン)の情報筋は、ジャガイモ強盗が横行する現地の状況を伝えた。
地元の人々は夏至になれば収穫期を迎える早どれのジャガイモを家族に食べさせられると希望を胸に抱いていたが、夜中にコチェビ(ストリート・チルドレン)に盗まれてしまい、朝になると村中が大騒ぎになる。
「家の小さな畑に植えたジャガイモを守ろうと寝ずの番に立っていたが、コチェビたちが手に凶器を持ってやってきて、集団で襲い掛かってくる」(情報筋)
子どもまでがジャガイモ強盗を働くのを今までほとんど見たことがないと述べた情報筋は、強盗には兵士もいて、村人は「すべて国が悪い」と嘆いているとのことだ。
軍の兵士は、協同農場からの食糧供給に依存して暮らしているが、輸送過程で次から次へと横流しされてしまうため、規定量が末端の兵士のところに届くことはない。横流しされた穀物は、市場で販売されていたが、当局はこれを厳しく取り締まり、食料供給を正常化しようとした。
しかし、依然として横流しが横行しているようで、空腹に耐えかねた兵士たちは、民間人の村で窃盗行為に及ぶ。市場での穀物の販売が禁じられ、一般の消費者は国営米屋の糧食販売所で穀物を買うことになったが、まともに入荷しないため、ヤミ市で穀物を買い求めている
さらに、市場でのおこぼれに預かり延命していたコチェビも、当局の市場抑制策で食べ物が得られなくなったようで、盗賊団になって、村々を襲うようになったのだ。