金正恩氏の「斬首」に動きだした韓国軍
韓国陸軍が、北朝鮮の核兵器や長距離弾道ミサイルなどを破壊するための特殊部隊の編成を進めている。
韓国陸軍特殊戦司令部(特戦司)は23日、国会国防委員会の陸軍国政監査業務報告資料を通じて、「敵(北朝鮮)の戦略的核心標的を打撃するための特殊部隊の編成を推進している」と明らかにした。ここで言う「戦略的核心標的」が、核関連施設や移動式弾道ミサイルを指しているのは明らかだ。
一方、韓国空軍は同様の資料で、来年にも戦闘攻撃機KF-16に遠距離から北朝鮮領内を隅々まで攻撃できる能力を付与すると明らかにしている。
これらの動向は、何を意味しているのか。
筆者は韓国軍が、北朝鮮に対する「先制攻撃」を、現実的な選択肢として想定し始めたのだと理解している。
北朝鮮は、すでに実質的な核武装国だ。また、軍事境界線近くには韓国の首都・ソウルを射程に収める長距離砲部隊が展開している。仮に、朝鮮半島で全面戦争が勃発すれば、最終的に米韓連合が勝利するのは間違いない。しかし、緒戦でソウルを「火の海」にされ、経済が甚大なダメージを受けるのは避けられないだろう。
それを防ぐために、「北朝鮮が戦争を決断する前に、先制攻撃で制圧してしまおう」との考えが頭をもたげるのは、むしろ必然と言える。
そうなると、韓国軍の攻撃対象は核施設や弾道ミサイルにとどまらない。北朝鮮に戦争を決断させないようにするためには、最高指導者である金正恩氏の「除去」が必要との意見も出てくるだろう。
実際、韓国国防省のチョ・ソンホ軍構造改革推進官は8月に開かれたフォーラムで、韓国軍が金正恩氏に対する「斬首作戦」の導入を計画していると明かしている。
国政監査で明かされた特戦司や空軍の計画も、あるいは「斬首作戦」の一環ではないのか。ちなみに、韓国映画「シルミド」で描かれた北派工作員たちは、実在した韓国空軍所属の部隊をモデルにしたものだが、その伝統を受け継ぐのが特戦司である。韓国軍は1万人もの特殊部隊員を北朝鮮に潜入させた歴史があり、金正恩氏に対する「斬首」も絵空事とは言えない。
もっとも、北朝鮮側が容易い相手でないのはもちろんだ。北朝鮮が、核施設の防御力を試すために自ら行った演習では、施設への接近を試みた50の精鋭部隊が防衛隊により全滅させられたという。
いずれにせよ、金正恩氏の登場以来、朝鮮半島情勢はきな臭さを増している。安保法制が成立し、朝鮮半島有事で米軍と行動をともにするとの誓いを立てた日本は、朝鮮半島の軍事動向をいっそう注視すべきだ。