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アニメやアニメファンにとってのSNS:Twitter移動騒動から見えてくるもの

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:ロイター/アフロ)

今月頭から先週にかけて、Twitterの代替となる新しいSNSへの“移動”を考える人たちの声が一気に広がる、大きな騒動がありました。

Twitterからの移動が話題となること自体は、昨年10月のイーロン・マスク氏による買収以降、急な方針転換や仕様変更、それに伴う混乱が絶えないこともあり、正直今回が初めてではありません。

しかし今回の騒動に関しては、『もしTwitterが使えなくなったら…』という危機感をリアルに抱かせる内容であったことや、大手IT企業による新規SNSのリリースタイミングと被ったこともあり、一層大きく波紋を広げていたようです。

しかし現状、多くのアニメファンやアニメ公式アカウントが情報の収集や発信、拡散や他SNSへの導線として重点を置いているTwitter。そこからの移動先となり得るようなSNSは、果たして存在するのでしょうか。

■騒動の経緯

ことの発端となったのは、日本時間7月1日から2日にかけて、多くのユーザーの間でツイートの取得・閲覧に制限がかかり、タイムラインや検索結果の表示といった機能の大半が利用できなくなったことでした。

後にTwitter側からは、プラットフォームに害を及ぼすボットや悪質なアクターを検出・排除するための一時的な利用制限であったとの説明がありましたが、排除対象による対応を防ぐため事前告知無しで行われたその制限は、ユーザー間に大きな混乱を招くことになります。

実際に、しばらくは情報を得ようにも検索結果が見られなかったり、その日ピンポイントで発信したかった投稿が上手く閲覧・拡散されなかったり、繋がっている他のユーザーの様子が全く確認できなかったり…。

アニメ関連でも、2日に最終回を迎えた「機動戦士ガンダム 水星の魔女」で、リアルタイムでの感想の閲覧・共有等が難しくなったことから、せっかくの盛り上がりに水を差されたと、ファンからのTwitterへの苦言も少なからずあがっていました。

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前述の通り、これまでにも仕様変更などに伴う混乱の度に、Twitterから新たなSNSへ移動を試みる動きは度々起こってきました。

しかし今回は、一時的とはいえ実際に機能の大半が利用できない状況に陥ったことで、これまで以上に、移動先のSNS探しの動きが活発化していたように思います。

■新たなTwitterとなるSNSは存在するのか

そうして先週末にかけて、ユーザーそれぞれの利用目的(情報収集や他ユーザーとの繋がり、何らかの作品投稿等)毎に、移動先候補となる新たなSNSでのアカウント開設が頻繁に行われることとなりました。

しかし、突然の登録者増加に追い付かず利用や登録が思うようにできなくなるプラットフォームもあれば、米メタ社が新たにリリースし注目を集めたThreadsも、多くのヘビーユーザーがTwitterに求めている機能の代替にはまだなりそうにないということで、制限も緩和された現在、結局多くのユーザーが保険としてアカウントは作ったもののTwitterへと戻ってきている状況です。

つまり現状では、新たなTwitterと呼べるような移動先のSNSは、まだ存在・誕生しなかったようです。

もちろん、その理由としては、各SNSの機能やコンセプトの合う・合わないもあるかもしれませんが、こうした今回の一連の騒動からは、ことTwitterのユーザーにとっては、そのSNSがどういうものかということよりも、そのSNSに誰が集まっているのかがかなり重要視されていることも感じられました。

特にアニメ公式アカウントやアニメファンにとっては、以前別記事でもあげた通り、Twitterは現状アニメの情報を求める人が最も集結しているSNSということで、「製/制作側にとっては発信した情報を届けたい層に一番届けられる場所として、ファンにとっては欲しい情報を得るにはまずここを押さえておけば間違いない場所として、それぞれ重宝」されています。

こうした前提がある限り、アニメ公式やアニメファンにとって、情報収集や発信、交流の中心となるSNSは、やはりまだしばらくTwitterであり続けるのでしょうし、逆に言えば、Twitterに代わるSNSが誕生するとしたら(既存のSNSがTwitterに代わる存在になっていくのだとしたら)、それは機能面云々というよりも、今後どのような登録者がその場所に集まるのかも、大きなポイントとなってくるのかもしれません。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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