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白人警官に殺された黒人ラッパーの親友、元NBA王者のスティーブン・ジャクソンが人種差別撤廃を訴える

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
無抵抗の黒人男性が白人警官に殺されたことを抗議する人々は警察署に火をつけた(写真:ロイター/アフロ)

 コロナ禍が収まっていないアメリカでは、人種差別による抗議デモが行われ、警察署やお店が放火され、暴徒化したデモ参加者が略奪を起こすなど大きな騒ぎになっている。

 5月26日(日本時間27日)にミネソタ州ミネアポリスでアフリカ系アメリカ人のラッパー、ジョージ・フロイドさん(46歳)が詐欺容疑で逮捕されたとき、4人の白人警官のうち1人が手錠をかけられ無抵抗のフロイドさんを地面に倒して、膝でフロイドさんの首を地面に押し付けた。フロイドさんは「息ができない」、「殺さないで」と何度も訴えたが、警官はそのままの体勢で8分ほどフロイドさんを拘束。フロイドさんは病院に運ばれたが死亡した。

 この白人警官4人は懲戒免職となったが、逮捕はされておらず、ミネアポリスを始め全米各地に抗議活動が拡大している。ミネアポリスでは警察署や商店が放火され、暴徒化した一部のデモ参加者が店舗に押し入って商品を略奪するなど大暴動となり、ミネソタ州は非常事態を宣言した。

 2000年から14年までNBAのサンアントニオ・スパーズやゴールデンステイト・ウォリアーズなど8チームでプレーして、2002-03年シーズンにはスパーズでNBA優勝も経験したスティーブン・ジャクソン(42歳)は、28日(日本時間29日)にNBCテレビ局の『トゥデイ』に出演。フロイドさんは「双子」と呼ぶほどに親しい存在で、親友の死を嘆くとともに、アメリカ社会を悩ます人種差別の撤廃と、暴徒化するデモ参加者の鎮静を訴えた。

サンアントニオ・スパーズ時代のスティーブン・ジャクソン(PHOTO BY KIYOSHI MIO)
サンアントニオ・スパーズ時代のスティーブン・ジャクソン(PHOTO BY KIYOSHI MIO)

 ジャクソンとフロイドさんは共にテキサス州のヒューストン出身。20年以上も前に共通の知人の紹介で知り合い、出会った瞬間に「運命的なものを感じた」と説明。

 「プロのアスリートに群がってくる奴らは多く、友情という名を盾に色々とねだってくる。フロイドは真摯に俺を支えてくれた。見返りを求めずに支えてくれる友達は少ないが、フロイドはそういう奴だった。ヒューストンに戻ったときは、いつでも真っ先に彼に会いに行った」

 「最初に映像を観たときは、また白人警官に黒人が殺されたんだと思った」とジャクソンが言うように、アメリカでは白人の警官が黒人の命を奪う事件が続いている。

 警官の膝で首を押さえられたフロイドさんは「ママ、ママ」と2年前に亡くなった母親に助けを求めたが、その映像を観たジャクソンは「心が痛んだ。あれは心の奥底からの叫びだ。俺は黒人男性――強い黒人男性で――フロイドも同じだ。俺たちは簡単には母親に助けを求めない。命の危険性を感じて、自分ではコントロールができないときだけだ」と涙を流した。

ゴールデンステイト・ウォリアーズ時代のスティーブン・ジャクソン(PHOTO BY KIYOSHI MIO)
ゴールデンステイト・ウォリアーズ時代のスティーブン・ジャクソン(PHOTO BY KIYOSHI MIO)

 「ジョージ・フロイドの名前は永遠に語り継がれる。なぜならば、この世界は変わるからだ。ジョージ・フロイドから変革は始まる。これは間違っている。俺は間違いを認めない。俺は正義を求め、俺の親友のために公平を求める」とジャクソンはアメリカが抱える人種差別問題に終止符を打つべきだと主張。

 また、大暴動が起こっているデモ参加者に対しては、「人々がフロイドのために立ち上がったことをフロイドは喜ぶと思うけど、彼は暴動を求めてはいない。フロイドは皆が一つになり、正義のために戦うことだけを望んでいる。彼は暴力は望まないし、今起きていることも望んでいない」と暴動の鎮静を訴えた。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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