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カブス今永が『ドクターK』に変身!オープン戦での奪三振率は驚愕の19.2

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
オープン戦で三振の山を築き上げるカブスの今永昇太(撮影:三尾圭)

 4年総額5300万ドル(約77億円)でシカゴ・カブスと契約を結んで、念願のメジャーリーグ移籍を果たした今永昇太が、メジャー1年目の春季キャンプで三振の山を築いている。

 現地3月21日(日本時間22日)の時点で、3試合に先発登板した今永は、9回2/3を投げて、19個の三振を奪っている。この19奪三振は、メジャー全体で10位タイにランク。ランキング上位に名前を連ねる他の投手たちが揃って13イニング以上を投げている中で、今永だけが投球回数が二桁に達していない。
 メジャー全体で、今春に17奪三振以上を記録している投手は26人いるが、その中で投球回数が10イニングに満たないのは今永だけである。

現地3月21日終了時点での今春MLBオープン戦、奪三振ランキング(MLB公式サイトより)
現地3月21日終了時点での今春MLBオープン戦、奪三振ランキング(MLB公式サイトより)

 今永の投球回数が他の投手よりも少ない理由は、現地3月20日(日本時間21日)の登板がメジャーリーグのチーム相手ではなく、マイナーリーグ相手の練習試合に登板したため。この日、カブスはオークランド・アスレチックスとのアウェイゲームが組まれていたが、カブス首脳陣は今永を遠征に送るのではなく、キャンプ地で行われるサンフランシスコ・ジャイアンツ傘下のマイナーリーグとの試合に登板させることを選んだ。

 この試合で今永は5回1/3を投げて、打者22人から圧巻の13奪三振を記録。この変則試合の記録を足すと、今オープン戦での今永は15イニングを投げて32奪三振となり、メジャー・トップのスペンサー・ストライダー(アトランタ・ブレーブス)の29奪三振をも上回る。
 25歳のストライダーは102マイル(約165キロ)の剛速球を武器とする現役最強の奪三振マシンで、2年連続200奪三振以上を記録中。昨季は281個の三振を奪い、MLB歴代2位となる奪三振率(9イニング当たりに奪う三振数)13.55を記録した。
 今春もストライダーは絶好調で、5試合に登板して1点も許していない。今春の奪三振率13.98もメジャー・トップである。

 今永はマイナーリーグとの試合を含めると、奪三振率が19.20と驚異的な数字となり、現役最強の奪三振投手であるストライダーの数字を大きく上回る。
 マイナー相手の試合を含めなくても、今永の奪三振率は17.69で「隠れ1位」となっている。

今春の奪三振率がMLB「隠れ1位」の今永昇太(撮影:三尾圭)
今春の奪三振率がMLB「隠れ1位」の今永昇太(撮影:三尾圭)

 三振を次々に奪う剛腕投手のイメージからはほど遠い今永の速球の急速はメジャー平均にも満たない。
 しかし、メジャーでもトップクラスの回転数を持つ速球を投げることで、打者への体感スピードは実際の球速よりも速く感じる。また、スライダーやチェンジアップ、カーブなどを効果的に織り交ぜることで、打者を幻惑して、的を絞らせない。

 今春は日本であまり投げなかった高めの速球に取り組んでいる。イアン・ゴームス捕手が「(今永の)高めの速球は伸びがある」と語るように、ホップするように高めに浮き上がる今永の速球は、メジャーで大きな武器となり得る。

 日本では高めの速球は見送られる傾向が高かったが、高めを振り回してくるメジャーの打者相手だと、空振りを取れる球となる。

 ただし、気をつけないといけないのは、高めの球はホームランになりやすい点。

 日本時代から被本塁打は多かったが、メジャーでは日本以上に一発に警戒しなければならない。
 今春もゴロ/フライ率が0.11と桁違いに飛球が多いのが懸念材料。
 高めの速球は諸刃の剣となりかねないが、修正力の高い今永であれば、シーズンに入ってからも修正を続けながら、被本塁打を減らしながら、奪三振を増やす投球が期待できそうだ。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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