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新日本プロレス52周年の「旗揚げ記念日」、IWGP王者対決に臨むSHOが辿ってきた道のり

清野茂樹実況アナウンサー
反則をくり返し、IWGPジュニア王者となったSHO(写真:東京スポーツ/アフロ)

来月6日に大田区総合体育館で行われる新日本プロレス「旗揚げ記念日スペシャルシングルマッチ」は、内藤哲也とSHOの対戦と決まった。階級を超えたIWGP王者同士の対戦が組まれることはあらかじめ発表されていたものの、この組み合わせを予想したファンは多くなかったのではないか。今月、ジュニア王者となったばかりのSHOはこれまでどんな道を歩んできたのか?反則をくり返し、ブーイングを浴びる姿しか知らない新規ファンに向けて解説したい。

長い下積み経験

SHOが新日本プロレスでデビューしたのは2012年11月、ブシロードが親会社になってから最初に誕生したレスラーの一人である。若手選手の活性化を目的に始まった「NEVER」という大会で最初にリングに上がったときは、多くの選手同様に本名を名乗っていた。当時は今ほど若手選手にチャンスが与えられることが少なく、試合が組まれず、先輩の雑用をこなすためだけに巡業に出ることもあったほどだ。次の新人選手がなかなかデビューしなかったこともあり、前座の期間は長く、3年以上に及んだのである。

タッグチームとして活躍

最初の転機は海外遠征だった。メキシコと米国での遠征からの帰国を機に、リングネームをSHOに改めると、同期のYOHとタッグチーム「ROPPONGI 3K」を結成。筋肉質の肉体から繰り出すパワーと柔術をベースにした技術を織り交ぜたスタイルで、トップ選手の仲間入りを果たす。ジュニアヘビー級で順調にステップアップするものの、YOHとのコンビで5度手に入れたIWGPジュニアタッグ王座は、いずれも短命に終わってしまうのであった。

突然の裏切り

そんな状況に危機感があったのだろうか。2021年8月にSHOは突如として、パートナーのYOHを裏切り、悪党集団のHOUSE OF TORTUREに加わる。テーマ曲やコスチュームは一変、それまで培った技術も封印してしまう。凶器の使用はもちろん、試合に乱入したり照明を消したりと、反則を繰り返す現在のファイトスタイルへと変貌を遂げたのである。かつての実直な人柄は影を潜め、ブーイングを浴びて息巻く姿は、もうシングル王座はあきらめたのでは、と思わせるほどであった。

王座初戴冠で迎える試合

しかし、今月23日、SHOはエル・デスペラードを下してIWGPジュニア王座を獲得。旗揚げ記念日に内藤哲也との王者対決が決定したのである。団体にとって特別な日のメインイベントに、これほど善と悪の色が鮮明な試合が組まれるのは記憶がない。HOUSE OF TORTUREの介入など大荒れの展開が予想されるが、善悪のはっきりした試合は創業者・アントニオ猪木が残したプロレスであり、生え抜き同士がメインイベントを務める意義は大きい。絶対的な人気者である内藤を相手に新ジュニア王者がどこまで己の存在感を見せつけられるか、筆者は大いに注目している。

※文中敬称略

実況アナウンサー

実況アナウンサー。1973年神戸市生まれ。プロレス、総合格闘技、大相撲などで活躍。2015年にはアナウンス史上初めて、新日本プロレス、WWE、UFCの世界3大メジャー団体の実況を制覇。また、ラジオ日本で放送中のレギュラー番組「真夜中のハーリー&レイス」では、アントニオ猪木を筆頭に600人以上にインタビューしている。「コブラツイストに愛をこめて」「1000のプロレスレコードを持つ男」「もえプロ♡」シリーズなどプロレスに関する著作も多い。2018年には早稲田大学大学院でジャーナリズム修士号を取得。

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