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ドネアに勝利した王者を壮絶KOした中谷潤人 3階級制覇のその先は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
FUKUDA NAOKI 提供

24日、東京両国国技館でWBC世界バンタム級タイトルマッチが行われ、同級1位の中谷潤人(26=M・T)が、王者のアレハンドロ・サンティアゴ(28=メキシコ)に挑戦した。

試合の展開

試合が始まると、中谷が長身とリーチを活かしジャブをつき先手を取る。

王者サンティアゴも、フェイントをかけながら懐に入り込もうとするが、中谷の攻撃範囲が広く、攻めきれない。

途中パンチをヒットさせるシーンもあったが、中谷の得意な中・長距離戦にもちこまれ、ペースを握れないまま4Rが経過。

途中の公開採点では三者共に40-36で中谷を支持した。

サンティアゴは焦りを見せ、距離を詰めてくるが、直後に中谷の左のカウンターがヒット。

その後も中谷ペースで進んでいき、第6ラウンドに、中谷が踏み込みながら放った左ストレートでダウンを奪う。

サンディアゴはなんとか立ち上がったものの、ダメージが大きく、追撃のパンチを浴び再びノックアウトし、試合終了。

中谷が圧倒的なKOで王者を下し、WBCのベルトを獲得。同時に、日本7人目の世界3階級制覇を達成した。

勝敗のポイント

挑戦者でありながら、王者のような貫禄を見せてくれた中谷。リーチ差を活かし、完全にペースを握っていた。

以前の試合より、少し後ろに重心を構えているように見えたため、向かい合ったサンティアゴも、想像以上の距離を感じたことだろう。

序盤は重心を後ろに下げ、パンチを浴びないよう対策し、攻め時を見極め、徐々に重心を前に移し、スタイルを変化させていた。

KO勝利に繋がった左ストレートは、絶妙なタイミングで放ったパンチだった。

加えて、中谷が後ろから前にいきなり重心移動したことで、サンティアゴは距離感が狂い、反応できなかったように見えた。

試合後にも「倒れた時のパンチは見えなかった」と語った。

KOに繋がるパンチは「強いパンチよりタイミング」と言われている。

視認さえできない、絶妙なタイミングでパンチを打ち込まれれば、防ぐのはほぼ不可能だ。

これまでダウン経験がない王者を2度もKOしたことで、圧倒的な実力を世界にアピールできただろう。

今後の展開

中谷の試合後、メインイベントではWBAバンタム級のタイトルマッチが行われていた。

王者の井上拓真(28=大橋)が、挑戦者のヘルウィン・アンカハスを迎えての防衛戦。結果は拓真がボディでKOし、初防衛に成功した。

これにより現在のバンタム級王者達は以下の通りとなった。

WBA 井上拓真
WBC 中谷潤人
IBF エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)
WBO ジェイソン・モロニー(オーストラリア)

IBF王者のロドリゲスは、5月4日大阪で、IBF1位の西田凌佑(27=六島)との対戦が決まっている。

WBOの世界ランクには、3位石田匠(井岡)5位比嘉大吾(志成)、10位武居由樹(大橋)、12位堤聖也(角海老宝石)、14位那須川天心(帝拳)と日本ボクサーが多くランクインしている。

世界的にも現在は、4団体統一が主流になっている。そして、4つのベルトを獲得したものが、全階級で最も強いボクサーを決めるPFPランク入りを確実にしている。

中谷も意識しているようで「統一戦だったり、PFP(パウンド・フォー・パウンド)入りするのを目標に思っている」と展望を語っていた。

統一戦は、選手同士の団体が違うため交渉は難航するが、両選手が強く望めば可能性は高まるだろう。

タレント揃いの激戦階級と呼ばれるバンタム級だが、その中でも中谷の実力は、頭ひとつ抜けている。

今後はこの階級の中心的な存在になるだろう。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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