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会場も騒然 井上尚弥の消えるパンチとは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
Lemino BOXING PR事務局 提供

ボクシングWBC、WBO世界スーパーバンタム級王者の井上尚弥(30=大橋)が、4団体統一戦で、WBA、IBF同級王者のマーロン・タパレス(31=フィリピン)と戦った。試合は26日、有明アリーナで行われた。

試合の展開

試合開始のゴングが鳴ると、まず動きを見せたのは井上。強打を打ち込み攻勢に出て、タパレスを追い詰める。

第2ラウンドでは、タパレスもガードをあげながら攻勢に出ようと試みるが、手がでない。その後のラウンドも井上がペースを譲らず、タパレスを追い込んでいく。

そして第4ラウンドでは、ついにフェイントからのフックでダウンを奪った。

その後も井上の独壇場が続き、第10ラウンドで右ストレートを炸裂させ、2度目のダウンを奪う。

これまでのダメージもあってかタパレスは立ち上げれず、10カウントがなされ、試合終了。結果は井上10RKO勝利で、2階級での4団体統一に成功した。

勝利のポイント

スーパーバンタム級に階級を上げ、わずか2戦目でこれほどのパフォーマンスは発揮するとは、流石の一言に尽きる。

タパレスも2団体統一王者にふさわしい実力を発揮したが、井上がそれを上回る強さを見せつけた。

特に試合の決め手となった、右ストレートはタパレスがよろけるまで、観客のほとんどが、何が起こったのか分からないという状況だった。

タパレス本人も「イノウエはスピードが非常に速い。とにかくスピードが速くてついていけなかった。パンチが綺麗に決まったので、それが原因でした」と話していた。

予備動作が少なく相手に悟らせないパンチは、通常の何倍も威力がある。相手は衝撃だけが体にきて、気がついたら倒れているような状態になる。

まさに消えるパンチだ。タパレスも実際に拳を交えたからこそ脅威を感じたはずだ。

この無駄のない洗練されたパンチは徹底的な反復練習の賜物だろう。幼い頃からの積み重ねが、今の井上を支えている。

今後も井上が中心となる

2階級での4団体統一は、ボクシング史上2人目の快挙だ。

井上がバンタム級を4団体統一するのに9戦で、4年半近く(2018年5月から2022年12月)かかった。

新型コロナウイルスの影響や、一つずつタイトルを奪取していったため時間がかかったが、多くの場合、選手間の交渉や会場、団体の意向などにより、時間がかかるものだ。

しかし、スーパーバンタム級ではわずか2戦でこの偉業を達成した。

すぐにタイトル挑戦できたのも、井上の圧倒的な評価と知名度があったからだ。

井上は全階級で最も強い選手を決めるPFPランキング(パウンドフォーパウンド)でも1位に選出された経験がある。

井上と戦うだけで富と名声が手に入る。強すぎて相手が見つからない時代があったが、誰もが戦いたい憧れの存在となった。

また、サウジアラビアからも巨額オファーが届いているとの噂もある。

今後も井上の挑戦に期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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