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井上尚弥のライバル候補となるか カシメロが負傷ドローも余裕発言

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供全て FUKUDA NAOKI

ボクシング元IBF世界スーパーバンタム級王者小國以載(35=角海老宝石)と元世界3階級制覇王者のジョンリエル・カシメロ(33=フィリピン)が、12日東京・有明アリーナで対戦した。

試合の展開

試合会場には、カシメロの同胞のフィリピンの応援団が押し寄せ、名前がコールされると会場から歓声がおこった。

試合が始まるとカシメロが先手を取り、いきなり小國に襲いかかる。

低い体勢からボディやフックを叩きつけ、小國をロープまで追い詰めた。小國は離れた距離からパンチを打ち返すが、カシメロの勢いは止まらない。

続くラウンドでもカシメロが攻勢をかけ、小國のガードを吹き飛ばした。

小國もカシメロの攻撃を受け止め、ボディ打ちで反撃する。小國のパンチも当たりだすが、カシメロはそれを上回る攻撃力で勢いを増していく。

第3ラウンドでは、カシメロのペースが次第に落ちてきた。ボディ攻撃が効いてきたのか、小國が巻き返しをはかる。

そして第4ラウンド、小國がペースを掴みかけたところで、突進してくるカシメロの頭が当たり目の上をカット。

ドクターチェックが入り、試合続行不可能と判断され、負傷ドローという結末になった。

試合後

試合後、会見場に現れた小國は表情に悔しさをにじませていた。

試合を振り返り「序盤でパンチをもらって効いた場面もあったが、思ったより見えた。ガードの上から効くパンチはなかった。ボディはタイミングよく当たっていて、(カシメロが)効いていたので腹を打っていった」と確かな手応えを感じていたようだ。

序盤は勢いを見せたカシメロだったが、力みがありスタミナもあまりなかった。

小國が試合前に「5ラウンドまで凌げばチャンスはある」と話していた通り、序盤は耐え、徐々にペースを掴んでいた。

しかし、互角の展開を見せていたところで、負傷ドローとなってしまった。

この結果については「止まった瞬間はしゃあないと思った。これでやったらパンチが見えなくて効くのがわかっていた」と素直に受け止めている。

出血量は少なくなかった。血が目に入りパンチが見えなくなる危険を考えれば続行不可妥当な判断だ。

カシメロのようなハードパンチャーが相手であれば、なおのこと直撃をくらったら危険だ。

悔しさはあるだろうが、確かな手応えはあっただろう。今後について聞かれた時も「まだ分からないが、チャンスがあれば再戦したい。もう一回頑張りたい」とリマッチを希望する発言もあった。

小國が前戦の2022年5月に行われた栗原戦でも4Rに目の上をカットし、負傷判定となった。このまま終わる男ではないだろう。

カシメロの今後は

一方、カシメロからは「今日の試合に向けてはライトなトレーニングしかやっていない。井上戦が決まればハードなトレーニングをして本当の力をみせる」と余裕発言が飛び出した。

スーパーバンタム級に階級を上げてから3試合目となるが、この階級での実力はまだ未知数だ。

階級を上げるとパワーはつくが、その分スタミナは落ちる。試合でも無駄なパンチが多く、持ち前のパワーを使いこなせていないように感じた。

序盤の怖さはあるが、ディフェンスも荒くスタミナ不足も露呈された。

しかし、一発で倒すパワーを持ってはいるので、この階級に慣れてくれば、また違ったスタイルを見せてくれるだろう。

小國との再戦については「再戦しても小國はあんなものなので、対戦する必要はない。誰でもいいが、次は井上とやりたい」と否定的だ。

しかし、カシメロと契約する伊藤雅雪プロモーターは、「この内容ですぐに井上尚弥戦とは言えない。アメリカでしっかりトレーニングを積ませてから試合をさせたい」とコメントした。

井上は12月にタパレスとの4団体統一戦を控えており、井上が勝利すればカシメロも対戦候補の一人となる。

しかし、伊藤氏の発言からもあったように、まだ井上の対戦相手にならないだろう。

盛り上がりを見せるスーパーバンタム級の行方に注目していきたい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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