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すでに実力は世界ランカークラス?ボクサー体型に変化した那須川天心の実力は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供全て 秋葉蘭之助

18日東京・有明アリーナで、東洋太平洋スーパーバンタム級8位の那須川天心(25=帝拳)のプロ2戦目が行われる。

公開スパーリング

8日の公開練習では、4ラウンドのスパーリングを実施し好調さをアピールした天心。相手を務めた世界ランカークラスの選手を圧倒していた。

特に目を見張ったのは、スピードとカウンターのタイミングだ。前回の試合では、パンチを当てるだけで終わっていたが、2発3発と追撃が加わり、カウンターでのKOを意識した戦い方に進化していた。

元来の反射神経のある選手だ。パンチを避けるディフェンスに加え、攻撃の山を作る攻撃力が加わり、数ヶ月前とは比べ物にならないほどレベルアップしていた。

ボクサー体型に変化

筆者は8月上旬、取材のため帝拳ジムへ訪れた。

キックボクサー時代に何度かインタビューしてきたが、ボクサーとしての天心を取材するのは初めてだ。

ボクシングに転向してからの変化について聞くと「ステップやパンチの打ち方、スタミナ配分、体の使い方など、キックとボクシングは全然違いますね」と口にした。

同じ格闘技とはいえ全くの別競技、戸惑いを感じるのは当然だ。しかし徐々に慣れつつあるようで、トレーニングの取材中もボクサーらしいシャドーを見せてくれた。

体つきもボクサーらしく変化している。以前よりひとまわり小さくなった印象を受けた。

キック時代にはフェザー級で戦っていたが、ボクシングでは階級を下げ、スーパーバンタム級で戦っている。

特に下半身の変化が著しい。大腿四頭筋が細くなり、ボクサー仕様に変わっていた。

キックボクシングとボクシングの大きな違いは蹴りの有無だ。ボクサーはフットワークでしか足を使わない。そのため瞬発的な筋力より、持久力が必要になる。長丁場を戦い抜く上で大きな筋肉は不要だ。

また、重心の位置の変化も見てとれた。キック時代には蹴りに対応するため、やや後ろ重心で戦っていたが、ボクサーらしく前重心に移っていた。

重心の位置が変わるだけで、さらに体重がのった強いパンチが打てるようになるだろう。

粟生隆寛トレーナーの存在

天心のボクシングを支えるトレーナー粟生隆寛は、元世界2階級制覇王者だ。現役時代は天心に似たスタイルで、サウスポーのカウンターパンチャーだった。

相性はかなり良いようで、取材中のミット打ちでも、通じ合っている様子がうかがえた。

粟生は天心を「聞いたことをしっかり理解してすぐ体で表現できる。運動神経、表現する力がすごくありますね」と高く評価している。

天心も「毎日一緒にいて新鮮ですね。迷っている時に言ってくれる言葉が響きます」と互いに信頼を置いているようだ。

現在強化しているのは、長丁場で戦い抜くためのスタミナと倒せるパンチ。

粟生は現役時代にカウンターKOを量産していた。タイミングが良く居合切りのようなキレのあるパンチだった。

この技術を習得すれば、さらに天心の理想とする〝倒す〟ボクシングに近づくだろう。

対戦相手の変更

当初対戦予定だったフアン・フローレスが新型コロナウイルス感染したため、メキシコのバンタム級王者ルイス・グスマン(27=メキシコ)との対戦に変更となった。

フアンより実績のある選手だが、対戦相手が変わってもやることは変わらないだろう。

天心はデビュー前から話題を呼び、世界王者以上に注目されている。

だが本人は「注目されることに対して戸惑いはない。日々発見ばかり。楽しいし、成長を感じている。こいつなら任せられるという思ってもらえる戦いができる」と自信を口にした。

驚きべきスピードで成長し、スタイルも日々進化している。長丁場に慣れていけば、近いうちに世界ランカーとの対戦も見られるだろう。

これほど今後が楽しみな選手はいない。デビュー2戦目でさらに成長したボクサー那須川天心を見せてほしい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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