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スーパーバンタム級に上げた井上尚弥 階級変更のメリットとデメリットは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:松尾/アフロスポーツ)

ボクシングバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(29=大橋)が、タイトルを返上し、スーパーバンタム級への転向を発表した。

階級変更の難しさ

井上はこれまでライトフライ級からバンタム級まで3階級を制覇している。しかし、途中フライ級(50.8kg以下)を飛び級しているため、今回のスーパーバンタム級(55.3kg)は、5階級目の挑戦となる。

ボクシングにおいて、適正階級の見極めは勝敗を大きく左右する。一つの階級差は1.3kgから1.8kgほどで、数字だけ見れば小さな差に思えるが、対戦相手の体格は別人のように変わる。

体が大きくなれば、単純にパワーも耐久力も増す。井上も階級を上げたことで、これまでのように相手を一撃で倒すシーンが減ってくる可能性もある。

階級を上げるメリット、デメリット

私は現役時代、階級を変えずに戦い続けた。理由は自分のボクシングが通じなくなるからだ。

階級を変えるたび、スタイル変更や肉体改造を強いられ、失敗する選手を多く見てきた。それほど階級変更にはリスクが伴う。

しかし、階級を上げれば減量が楽になり、パフォーマンスは上がる。精神的にも良い影響があるだろう。

自分の体の成長に合わせてベストな階級選定が必要になってくるが、井上はすでにバンタム級ではギリギリの状態で戦っていた。少しでも減量苦が緩和されるのであれば、階級を上げない手はない。

以前からスーパーバンタム級への準備を進めていたようで、フィジカルトレーニングで体をつくってきた。

会見でも「バンタム級は戦いたい相手もいない。これからは自分よりもでかい相手との戦い。これからが本当の戦い」と意気込みを語っていた。

これまでの試合を振り返っても、世界の舞台で苦戦したのは元5階級王者のノニト・ドネアくらいだろう。他を寄せ付けない強さでここまで勝ち上がってきた。

しかし、スーパーバンタム級ではそうはいかない。パッキャオやメイウェザーでさえ階級を上げるにつれてKOの数は減っていった。

パワーを活かしたボクシングに加え、戦い方のバージョンアップも必要になってくる。バンタム級時代とは違った新たなスタイルが見られることになるだろう。

写真:松尾/アフロスポーツ

スーパーバンタム級が最終章

井上は「アジャストして戦っていくには、バンタム級と同じくらいかかると思うので、スーパーバンタム級が最終章」と語った。

ファンの間ではフェザー級への挑戦も話題になっている。本人は階級変更に慎重のようだ。世界的にバンタム級は軽量級の部類に入るが、フェザー級からは中量級だ。そうなれば更に注目度が上がる。個人的には日本人初となるフェザー級での5階級制覇の快挙も期待したい。

バンタム級で4年7ヶ月戦い、スーパーバンタム級に上げたことで、また新たなライバル達との戦いが始まる。

この階級には以下の王者が君臨している。

WBAスーパー&IBF王者 ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)

WBC&WBO スティーブン・フルトン(アメリカ)

アフマダリエフは、次戦にIBF1位マーロン・タパレス(フィリピン)との指名試合を控えている。

一方、フルトンは減量苦を理由に階級を上げ、フェザー級への転向も示唆している。しかし、井上とのビッグマッチが話題を呼べば、この階級にとどまり井上と対戦する可能性はあるだろう。

井上は会見で「スーパーバンタム級はかなりタレント揃い。どの選手と戦っても面白いと思っています。パッと思いつくのは僕の中で4人の選手の名前が挙がっている」と話していた。

バンタム級以上に混戦となりそうだ。新たなステージに足を踏み入れた井上に、最初に立ちはだかるのは誰になるのだろうか。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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