なぜ井岡一翔の統一戦はドロー判定となったのか ボクシングの採点基準とは
31日大晦日に東京・大田区総合体育館で、ボクシング2団体統一戦が行われWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(志成)が、WBA同級王者ジョシュア・フランコ(米国)と戦った。
試合の展開
堅実なボクシングスタイルの井岡、ファイタータイプのフランコ。対照的なスタイルの両者だが、実力は伯仲していた。
序盤から終盤まで試合の構図は、ほとんど変わらなかった。井岡がジャブをつきながら距離をとり、的確にパンチを当てていくのに対し、フランコは常に攻め続け手数で圧倒していた。
互いの得意なボクシングを貫き続けた証拠だろう。最後まで拮抗し、結果は1-0の判定で引き分けとなった。(ボクシングの採点では2人以上のジャッジが支持しなければドローとなる)
ボクシングの採点基準
今回の試合は、ジャッジの見方によって分かれる採点だっただろう。ボクシングでは、次のような採点基準となる。
優勢なボクサーに10点、劣勢なボクサーに9点を与え、拮抗したラウンドでも10対10を付けずに、ポイントを振り分けていく。
そのため互角なラウンドでもどちらかにポイントをつけなければならない。井岡がリングジェネラルシップとディフェンス、フランコがアグレッシブだった。
有効なクリーンヒットがない場合は、ジャッジの判断基準や見ている角度でも採点が変わってくる。私も採点をつけながら見ていたが、どちらに振り分けるか悩むラウンドが多かった。
今回の試合では、お互いに最善を尽くした結果ドローとなった。井岡は「手応えもあったし、勝っていると思っていた」と語っていた。
私も経験があるが、自分ではうまく戦っていたと思っても、後で採点を見るとポイントが相手に流れているケースもある。
試合後には「皆さんのご期待に応えられなかったことをお詫びしたい。リングに上がれるのはファンの方や関係者など皆さんのサポートのおかげです。チャンピオンとして挑戦し続ける姿を見せ続ける」と語った。
試合直後で悔しい思いもある中で、立派に応えていた。
井岡は誰と戦う
今回のドロー防衛によって井岡の行く末は大きく変わった。今後に向けて、まず有力なのはWBOの指名挑戦試合として前WBOフライ級王者の中谷潤人との対戦だろう。中谷はこれまで24戦全勝(18KO)の戦績を誇り、長身のサウスポーでネクストモンスターと呼ばれている選手だ。
中谷は今回の試合も視察に訪れており勝者との対戦も希望していた。新旧の日本人王者対決が決まれば、非常に注目の試合となるだろう。中谷は井岡との対戦について「井岡選手が一番やりたい。ターゲットにしてトレーニングしている」と話している。井岡戦に向け年明けからアメリカで合宿を行うようだ、スーパーフライ級の完全制覇を狙う井岡にとって中谷は大きな壁となるだろう。
また、視察に来ていたWBC王者のファンフランシスコエストラーダとの対戦も有力視されている。井岡はスーパーフライ級に転向してからエストラーダとの試合を希望している。勝者と対戦希望を口にしていたが、ドローになったことで状況も変わってくるだろう。
しかし、エストラーダはインタビューでこう語っている。「次は個人的には井岡と試合したい。フライ級でも同じ時期に王者で、当時から対戦したかった。井岡がWBO王座を返上し無冠になったとしても対戦したい」と話している。
統一を目指す井岡としては、ベルト返上は考えにくいが、エストラーダが今回の試合のために来日したこともあり井岡戦への関心は高い。井岡も「エストラーダが一番この階級で評価が高い。彼に勝つのがベスト」と話していることもあり対戦する可能性もあるろう。
またフランコとの完全決着も興味深いところだ。フランコは「自分の方が勝っていたと思うけど、ジャッジの判定を支持します。日本でリマッチがしたい」と再戦を希望した。33歳となり年齢的にもピークを迎えつつある井岡だが、この階級で主役となっている。日本人として初となる4階級制覇、2団体統一など数々の歴史を作ってきた井岡の今度の動向に注目だ。