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カシメロの王座剥奪でバトラーが正規王者に 井上尚弥の4団体統一に向けての影響は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供 Fukuda Naoki

3日(日本時間4日)、ボクシングWBO世界バンタム級王者のジョンリエル・カシメロ(フィリピン)の王座剥奪が発表された。

WBOが正式に発表

カシメロは先月22日、同級1位のポール・バトラー(イギリス)との対戦が予定されていた。

この試合は、本来であれば昨年12月に行われる予定だったが、カシメロの体調不良による計量のキャンセルで中止となっていた。

再度試合が組まれたが、カシメロが試合直前の調整でサウナを使用する映像を自身のYouTubeチャンネルにアップしたことで事態が急変。

英国ボクシング管理委員会(BBBofC)は、試合前のサウナの使用に厳格な規定を設けており、医療ガイドラインの違反行為を行ったとして、試合に出場できなくなった。

相次ぐトラブルにより、WBOはカシメロの王座剥奪を決定した。

バトラーは代役のジョナス・スルタン(フィリピン)と暫定王座決定戦を行った。

3-0の判定で勝利したものの暫定王者となっていたため、正規王座に昇格することが発表された。

物議を醸すカシメロ

カシメロはここ最近、何度も試合をキャンセルしていた。

昨年7月にはWBC王者のノニト・ドネア(フィリピン)との対戦が内定していたが、ドネアが要求するドーピング検査をカシメロが拒否。それにより試合が消滅した。

次に決まったのは元2階級王者のギジェルモ・リゴンドー(キューバ)との対戦。

この試合は予定通り行われたが、防御力の高いリゴンドーにカシメロの強打が不発。なんとか2-1の判定で勝利したが、大苦戦となった。

2019年に当時WBO王者であったゾラニ・テテ(南アフリカ)を破り、一躍脚光を浴びたカシメロだったが、それ以降は試合数も減り1年に1回のペースとなっていた。

実戦経験も不足し、プロモーターとの不仲も噂され、ビッグチャンスを掴めない日々が続いていた。

対抗王者であった井上尚弥を盛んに挑発して対戦を仰いでいたが、最後は自滅する形で戦線離脱となった。

井上の4団体統一に期待

カシメロの離脱により、井上の4団体統一への道は一気に広がった。現在バンタム級は下記の王者が君臨している。

WBA&IBF 井上尚弥

WBC ノニト・ドネア

WBO ポール・バトラー

2つのベルトを持つ井上は、6月にドネアとの再戦が決まっている。

その試合に勝利すれば、4団体統一戦として対抗王者のバトラーとの試合が決まる可能性は大いにある。

バトラーも、井上VSドネアの勝者と対戦を希望している。

海外メディアのインタビューで「私はWBOのベルトを巻いた。さらに大きなビッグマッチに挑む気持ちはある。まずは、ナオヤ・イノウエとノニト・ドネアの試合の結果を興味深く見守りたい」と話している。

井上は減量がきつく、一つ上のスーパーバンタム級への転向も示唆しているが、カシメロの離脱により状況が変わってきた。今後の動向が気になるところだ。

井上が目指す4団体統一王者は、全階級を通じて7名しか存在しない。その快挙を成し遂げたら井上の名前はさらに広がっていくだろう。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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