異例のダイレクトリマッチ 矢吹正道VS寺地拳四朗の因縁の再戦の行方は
3月19日、京都市体育館でボクシングWBC世界ライトフライ級タイトルマッチが行われ、王者の矢吹正道(29=緑)と元王者の寺地拳四朗(30=BMB)が対戦する。
試合の経緯
異例のダイレクトリマッチとなった。前回の試合は昨年9月に行われ、大方の予想では9度目の防衛戦となる寺地有利の声が多かった。
しかし、矢吹が巧みな戦術で前半にポイントをリードし、ペースを握った。焦った寺地は積極的に攻めにいったが、矢吹に巻き込まれる形となった。
激しい攻防を繰り広げ、10ラウンドに矢吹がパンチをまとめたところでレフェリーが試合をストップ、矢吹のTKO勝利で王座を奪取した。
年間最高試合賞にも選ばれたほどの試合だったが、寺地陣営が矢吹による故意のバッティングを訴えたことで大きな話題を呼んだ。
後日、WBCから異例のダイレクトリマッチ指令が出され、約6ヶ月ぶりの再戦が決定した。
寺地拳四朗について
これまでは王者として数々の挑戦者を退けてきた寺地だが、今回は挑戦者として試合に臨む。
両者のこれまでのキャリアや実績を比べると、総合力では寺地有利だろう。
世界タイトルを8度防衛した実績を持ち、抜群の安定感がある。得意のフットワークと抜群の距離感で快進撃を続けていた。
前回の試合直前には新型コロナウイルスの感染により、2週間の隔離期間があった。敗戦はその影響もあったのでは、とも言われている。
現在は再戦に向けて、万全の体制で調整しており「すごくいい感じで仕上がってます。今回はチャレンジャー側なので心境は違うが、とりあえず勝つだけ」と自信を見せる。
前回の試合ではコロナの感染、公開採点でフルマーク負けなど想定外の事態が起こった。雪辱を果たすため、今回はベストコンディションで矢吹に挑戦するだろう。
矢吹正道について
初の世界挑戦で王座を獲得した矢吹、その実力は想像以上だった。
これまで12勝11KO3敗と、高いKO率を誇っている。
激しい撃ち合いを見せることからファイタータイプと思われがちだが、実際は試合に向けて緻密な戦術を組み立てる頭脳派ボクサーだ。
前回の試合でも寺地対策として「ジャブへのカウンターなど全てに対応しないで、踏み込んだパンチに対応する」と作戦を練っていた。
打ち合いでの強さもちろん、距離の取り方など技術レベルも高い。
今回の試合に向けて「17戦目のキャリアの中では一番自信がある。前回のスパーリング内容より、今回のほうが明確にいい」と好調さをアピールした。
これまで寺地に敗れてきた挑戦者は、独特なリズムに惑わされ、その術中にハマってきた。
しかし、一度戦っている矢吹は違う。王者になったことで自信をつけ、再び勝利を狙うだろう。
勝敗のポイント
今回の試合、鍵となるのは前半のペース争いだ。
矢吹は得意とする打ち合いに持ち込むために、前半でポイントを稼ぎ、寺地を得意な間合いに誘い込みたい。
寺地は前回手数が少なかったために、ポイントを逃してしまった。得意の出入りで前半にポイントを稼ぎ、自分のペースに持ち込みたいところだ。
12ラウンドの世界戦では、前半の4ラウンドまでの流れで、勝敗が決まるといっても過言ではない。
ボクシングは守りの姿勢では、チャンピオンになれないと言われている。
互角のラウンドでは王者にポイントが流れてしまうことが多いため、挑戦者は積極的に攻めに行く必要がある。
私も世界挑戦の時に何度も「王者になるためにはリスクを取ってでも前に出ろ」と言われた。
初防衛を目指す新チャンピオン矢吹正道、王座奪還を目指す寺地拳四朗。
立場が変わった両者が、どんな試合を見せてくれるか楽しみだ。