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リナレスが最終回でまさかのTKO負け 試合を決めたのは死角からの強烈な一撃

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:Action Images/アフロ)

ボクシングWBCシルバー・ライト級タイトルマッチが19日(日本時間20日)、ロシアのエカテリンブルクで行われ、元3階級制覇王者ホルヘ・リナレス(36=帝拳)が、王者ザウル・アブドゥラエフ(27=ロシア)と戦った。

リナレスは、昨年5月にWBC同級王者デビン・ヘイニーに敗戦し再起戦となった。

試合の展開

アブドゥラエフはこれまで14勝8KO1敗の戦績を誇るボクサーだ。

唯一の黒星は2019年9月に行われた、現WBC王者デビン・ヘイニーとの暫定王座決定戦。4回終了時にアブドゥラエフが棄権し敗戦した。

両者ともにヘイニーに敗れており、再びタイトル戦に向かうための大事な一戦となった。

試合では、サイドに動きながらジャブを放つリナレスに対し、アブドゥラエフはガードを固めながらプレッシャーをかける。

序盤はリナレスが先手を取り、ペースを握っていた。アブドゥラエフは硬いガードから、上下にパンチを散らしていく。

中盤に入るとリナレスもボディで相手の動きを止めにかかるが、アブドゥラエフはさらにプレッシャーをかけ、鋭い右ストレートを放っていく。

徐々にアブドゥラエフのパンチがヒットし、リナレスにとって苦しい展開が続く。8ラウンドにはアブドゥラエフの右がヒットし、ロープ際に追い込まれてしまった。

後半になるにつれて勢いを増すアブドゥラエフは、パンチを集中して放ち見せ場を作る。リナレスも打ち返すが、ガードが固くなかなか崩せない。

そして最終ラウンド。両者打ち合いになった時にアブドゥラエフの左フックが直撃し、リナレスがダウン。立ち上がるも同じタイミングで左フックをもらい再度ダウンした。

その後、アブドゥラエフがパンチをまとめたところでレフリーが試合をストップ。

アブドゥラエフが、2分28秒TKOでリナレスを下した。

死角からの強烈な一撃

今回の試合では、最終回での劇的なKOとなった。

アブドゥラエフが最終回にダウンを奪ったパンチは、ストレートを打ってからの返しのパンチだ。

お互いがフックを打つタイミングで死角となり、KOに繋がりやすい。

ボクシングでは、強いパンチよりも見えないパンチの方が効く。いいタイミングで入ってしまうと、すぐには立つことができない。

最終回までいい勝負をしていたので、もったいなかった。

36歳となるリナレスだが、未だ最前線で活躍し続けている。

2002年に17歳でデビューしてからプロで20年。戦績は53戦47勝(29KO)6敗で、3階級制覇を成し遂げた。世界タイトルを5回獲得し、あのロマチェンコから唯一のダウンを奪った実力者だ。

私も現役時代は帝拳ジムでともにトレーニングしていたが、選手のお手本となるボクサーだった。基本に忠実で技術がしっかりしており、スピードと多彩なコンビネーションを持つ。

その技術を手本にしていたボクサーも多い。日本をこよなく愛し、明るい性格からジムのムードメーカー的な存在だった。

激戦のライト級

ライト級は熾烈な覇権争いが続いている。

その中心にいるのは、全てのベルトを持つジョージ・カンボソス・ジュニア(オーストラリア)だ。

その他にも、WBAレギュラー王座にガーボンタ・デービス(アメリカ)、WBC正規王座にデヴィン・ヘイニー(アメリカ)が君臨している。

王者以外にも、元3団体統一王者のワシル・ロマチェンコや、若手スターのライアン・ガルシアなどタレントが揃っている。

次戦で統一王者のカンボソスとロマチェンコが対戦するという報道もあり、これからライト級戦線はより一層激化していくだろう。

幾度の敗戦から立ち直ってきたリナレス、激戦のライト級で今後の動向に注目が集まる。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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