2度のダウンからまさかの逆転勝利 ジャパニーズタイソン佐々木尽
17日、ボクシング日本ユース・スーパーライト級タイトルマッチが行われ、王者の佐々木尽(19=八王子中屋)と2階級制覇を狙う日本ユース・ライト級王者の湯場海樹(23=ワタナベ)が戦った。
ともにこれまでの戦績は無敗で、期待される新人同士の対決に注目が集まった。
タイソンのようなパンチ力
佐々木尽はジャパーニーズタイソンの異名を持ち、これまで10戦全勝9KOの抜群のKO率を誇る。
高校生でプロになり破竹の勢いで勝ち進み、昨年の12月に日本スーパーライト級ユース王座を獲得。
マイク・タイソンに憧れタイソンと同じ左フックを得意とする選手だ。
対する湯場海樹は、元日本5階級王者の湯場忠志を父にもつサラブレッドで、これまでの戦績は9戦7勝(5KO)2分無敗。
アマチュア時代にはインターハイ準優勝の実績を持つ技巧派の選手だ。
そんな両者の試合はスリリングで劇的な展開を迎えた。
技巧派の湯場に対して、タイソンのようなスタイルで前に出る佐々木。
積極的に攻めてペースを握るが、1ラウンド終盤に湯場のカウンターがヒットして佐々木がダウンを奪われる。
続く2ラウンドでは、再び湯場の左ストレートを浴びて佐々木2度目のダウン。
パンチをまとめられピンチに陥る。普通ならここで心が折れてしまうが、佐々木は違った。
チャンスと見て詰めてきた湯場に対して、打ち終わりのガードが下がったところに得意の左フックを決めた。
湯場はその一発で効いてしまい、レフリーストップとなった。
佐々木が2度のダウンを跳ね返し、劇的な逆転KO勝利を掴んだ。
勝敗のポイント
佐々木は2度のダウンを奪われてからも勝負を捨てなかった。
自分のパンチに自信があるのだろう。
以前、彼に取材をした時も「試合で学んで、感覚を掴んだ。倒せるタイミングがわかるしガードの上からでも倒せる」と自信を持っていた。
防御に課題があるが、まだ19歳と若いため伸びしろは十分にある。
また、所属する八王子中屋ジムの先代の会長である中屋廣隆氏は「メンタルが強いし、度胸もある、何より素直。才能より努力の選手で心ができている」と評価していた。
今回の試合後にも佐々木はすぐに湯場のもとに駆け寄り健闘をたたえた。
パフォーマンスは一見派手だが、礼儀正しい好青年だ。
次戦について
佐々木の次戦は、10月19日後楽園ホールで日本スーパーライト級1位の平岡アンディ(24=大橋)との日本王座決定戦だ。
平岡は世界ランクに入り、海外の大手プロモート会社のトップランク社と契約しているボクサーだ。
両者はスパーリングを経験しており、お互いに手の内はわかっている。
平岡は「(佐々木)尽くんはエキサイティングなファイター。俺は世界しか見ていないので、日本王座は世界への通過点」と話していた。
佐々木も「あくまでも世界への通過点。世界への道が近づくのでKOで倒したい」と自信を持つ。
実績は平岡が上だが、佐々木は若いし伸びしろは充分にある。今回の試合で学んだことを次戦に活かしてほしい。
若手ホープの活躍で、中量級から目が離せない。