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なぜ引退したメイウェザーはリングに上がり続けるのか

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

6月6日(日本時間6月7日)、ボクシング5階級王者のフロイド・メイウェザー(44=アメリカ)が、YouTuberのローガン・ポール(26=アメリカ)と戦った。

試合会場には2万5000人以上の観客が詰めかけた。

試合の展開

先に入場したのはローガン・ポール。観客からのブーイングの中リングインした。その後、少し間をおいて大歓声の中メイウェザーが入場。

リングで両者が向かい合うと体格差が目立った。

前日の計量では、メイウェザーは155ポンド(70.3kg)、ローガン・ポールは189.5ポンド(85.95kg)でパスした。

身長を比べるとメイウェザーは身長173センチに対し、ローガンは188センチ、実に15センチの差がある。

この体格差を活かし、序盤はローガンが先手をとった。1ラウンド終盤にはラッシュを仕掛け見せ場を作る。

2ラウンドからは、メイウェザーがガードを上げながら前に出る。ローガンの打ち終わりを狙ってパンチを合わせていく作戦のようだ。ときおりボディも織り交ぜ、ペースを握っていく。

中盤になると、メイウェザーはさらにプレッシャーを強めた。

勢いを止めようとローガンはクリンチに逃げる。終盤にスタミナ切れの様子が見受けられたが、なんとか持ち堪え、規定の8ラウンドが終了した。

今回の試合はジャッジによる採点がないため、両者健闘を讃えあい試合が終了した。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

体格の壁に阻まれたメイウェザー

メイウェザーは試合後のインタビューで「タフな相手で驚かされた。だが楽しかった。彼には(試合の)経験は少ないが、体重を有利に戦った」とコメントした。

勝敗予想では圧倒的にメイウェザーのKO勝利が多かったが、さすがのメイウェザーも体格差には手を焼いたようだ。

ローガンは「世界最高のボクサーとここまでやれた。リングに立てて光栄。色々言われたが不可能ではない。戦い抜いて最高。見にきてくれてありがとう」と興奮した様子だった。

正直なところ私もメイウェザーのKO勝利を予想したが、ローガンが予想以上に善戦した。

特に序盤はメイウェザーからヒットを奪い、身体能力の高さを見せつけた。

中盤以降は防戦一方となり苦しい展開となったが、スタミナがもったのを考えると、試合に向けてしっかりトレーニングを積んできたのだろう。

なぜメイウェザーは戦うのか

メイウェザーにとって約2年半ぶりの試合となったが、まだまだ戦えることを証明した。

鉄壁のディフェンスと相手の出方に対応する能力は健在だ。

今回の試合でメイウェザーは、100億円近く稼いだとも言われている。

判定があればメイウェザーの圧勝だっただろうが、ローガンにとってはレジェンドとフルラウンド戦い抜いたという箔が付いただろう。

双方にとってメリットのある試合となったが、KOを期待して足を運んだ観客からはブーイングがあった。

しかし、これこそがメイウェザーのスタイルだ。

ビッグマウスで人々の注目を集めるが、試合では徹底的にリスクを回避し勝ちに徹する。

観客もメイウェザーの負ける姿に期待して会場に足を運ぶが、なかなか負ける姿は見られない。次こそはとまた試合を観に行くのだ。

気になるのは今後の展開だ。

試合後にインタビューでは、ローガンの弟のジェイクとの対戦についても聞かれた。

ローガンの弟のジェイク・ポールもYouTuberでプロボクサーとしても活動している。

兄と同じ体格で、こちらは3戦3勝(3KO)で兄よりボクシングの実力は高い。

メイウェザーは「今後のことはチームと相談して決める」と話すにとどめたが、今回の興行が成功したことを考えると今後、弟・ジェイクとの対戦の可能性もあるだろう。

マネーを愛称とするメイウェザー。一晩で何百億も稼げるのなら再びリングに上がる可能性は高い。

現役時代と変わらず影響力を持ち、稼ぎ続ける彼の今後の動向に注目したい。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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