天心にボクシングを教える葛西裕一が語ったとんでもない才能とは
4月10日、TBS系列の番組内でボクシング転向発表した那須川天心(22=TARGET/Cygames)。
彼にボクシングを指導する名伯楽葛西裕一トレーナーに話を聞いた。
トレーナー冥利に尽きる選手
ーーー天心選手のボクシング転向について、率直にどう思いますか。
葛西:長かったですね。契約年数などもありましたが、正直早くボクシングに来てほしい気持ちはありました。
ただ本人もキックボクシングでやり残したことを今消化しているのでしょう。コロナの影響で早くいかなかったのもいい材料だったのではないでしょうか。
ーーー葛西トレーナーは天心が15歳の頃から見ていますが、指導するようになったきっかけはなんですか。
葛西:柏に住んでいる友人から紹介されたのがきっかけです。「天才がいる」という話を聞いて、帝拳ジムに来て初めて会いました。
ーーー初対面はどうでしたか。
葛西:まぎれもない天才でしたね。教えたことをすぐ再現してくる、西岡利晃(元WBC世界スーパーバンタム級王者)以来の逸材だと感じました。
柔軟性があって、固定概念がないから素直に吸収しちゃうんですよ。素直だけど、ちゃんと聞き分けている感じもありました。使うか、使わないかは自分で判断している。教えたことも全て覚えていて、頭の良さを感じました。
ーーー全て覚えているってすごいですね。
葛西:それに、アドバイスした必殺技や小技を試合に必ずいれてくれるんですよ。教えたことを無駄にしない、トレーナー冥利に尽きる選手です。
天心の優れているところ
ーーー天心選手が15歳のころから、もう7年くらい指導しているんですね。
葛西:私が帝拳ジムにいたときは来れば週に2、3回くらい。その後は、所属するTEPPEN GYMでも月に2回は見ていました。
ーーー天心選手のパンチはどうですか。
葛西:独特なんですよ。ここ最近はあまり見られていないのですが、左ストレートは西岡みたいな感じですね。
ーーー最も優れているところは。
葛西:カンがいいです。あと右ジャブに関しては俺が教えることがもうないくらいで、世界ランカークラスですね。
ーーー今後の課題は。
葛西:左ストレートですね。西岡の左ストレートは(相手が)立ってこない。まだ相手が立ってくるので、一撃必殺にしていきたいですね。
その前に相手をどれだけ弱らせるかも大切です。キックは3Rしかないのでダメージがたまる前に試合が終わります。ボクシングでは、前半は我慢して痛めつけて中盤から後半でフィニッシュするイメージ。なので、後半にいい左ストレートをうまく決められれば相手は立ってこないですね。
ーーー実戦してみないと分からないですかね。
葛西:あとは接近戦の戦い方ぐらいですかね。ボクシングは長丁場なので、攻めきれなかった後の対処の仕方は必要なスキルです。
チャンピオンになった姿が目に浮かぶ
ーーー今後天心が世界王者になるために必要なことはなんだと思いますか。
葛西:ここまで負けていない、そういう人は勝負強いですから。どのようになっていくかはわかりませんが、世界チャンピオンになって当たり前だと思います。俺の願望もありますが、彼がなれなかったらまずいレベルです。
ーーー体格的にはスーパーバンタム、フェザー級ぐらいですかね。
葛西:その階級で十分いけると思います。日本人では背が低い方ですが、海外であの身長はザラですしリーチもあのへんですから、同じ様な体格でとんでもない化物もいますから。
日本人には到達できないところまで行ってほしいですね。
ーーー今後どんな選手になって欲しいですか。
葛西:もう後戻りできないでしょう。彼の性格を知っているからプレッシャーなんてないでしょうけど、だ今自分のことを崖っぷちに追い詰めているようなものです。
そこに身を置きながらもボクシングで世界チャンピオンになった時には偉大なチャンピオンになれる、その姿が目に浮かびますね。
葛西裕一
神奈川県横浜市瀬谷区出身、51歳。元日本&東洋太平洋ジュニアフェザー級王者。現役引退後は帝拳ジムトレーナーとして後進の指導に当たりながら西岡利晃、三浦隆司、五十嵐俊幸、下田昭文を世界王者にしている。2017年には東京都世田谷区にボクシング・フィットネスジムGLOVES」を立ち上げる。