令和初の世界チャンピオン中谷潤人「具志堅さんの記録を越えたい」
2020年11月、コロナ禍で2度延期になったWBOフライ級世界王座決定戦、フィリピンのジーメル・マグラモ選手相手に、見事8ラウンドKO勝利した中谷潤人。
その試合が評価され、2020年度のボクシング年間表彰で、殊勲賞を獲得した。
初の世界タイトル戦、今後の展望について話を聞いた。
どんな状況下であっても挑戦し続ける
──令和初の世界チャンピオンですね!生活は落ち着きましたか。
中谷:いまは落ち着いて、以前のような練習を再開しています。
令和初というチャンピオンは特に意識していなかったのですが、世界チャンピオンになって周りの方から「チャンピオン」と声を掛けていただけると、うれしくて実感が湧きますね。
──試合が2度延期になりましたが、影響はありましたか。
中谷:2回目の延期が決まった時は、すでに体重を落とし始めていて。精神面で少し辛い時期もありましたが、家族旅行でリフレッシュできたおかげで、うまく気持ちを切り替えられました。
延期のおかげでスパーリングも多くできましたし、こういう状況下でもきちんと調整ができました。
──減量はどうでしたか。
中谷:フライ級に落とすのが久しぶりだったので少し不安はありました。一か月半で普段の体重から9キロ少し……60キロ弱まで落としました。最後がきつかったですね。
──他の試合と世界戦の試合は違いましたか。
中谷:国歌が流れるので、この舞台に立てたのだなという感慨深さと責任の重大さで、少し緊張しましたね。
世界タイトルマッチについて
──ジーメル・マグラモ戦を振り返ってみてどうですか。
中谷:手数が多く前に入ってくることを想定して練習してきたので、1ラウンド目は距離を取って戦いました。
2ラウンド目でマグラモ選手が入ってきたときに、イメージどおり冷静に対応できました。
接近戦も意識しながら練習していたので、相手がプレッシャーを強めてきた場面でもしっかり戦えました。
ラウンドを重ねるごとにマグラモ選手の体力が消耗し、気迫が喪失していくのを感じ、いい流れでKOまで持っていけました。
──チャンスを見極め、イメージどおりに試合をコントロールできたのですね。
中谷:はい、1ラウンド目に左ストレートが入り、その後はリラックスでき、冷静に試合運びができました。
──ひとまず、世界チャンピオンに到達できたことは大きいですか。
中谷:そうですね、本当にたくさんの方にサポートしていただいて、自分自身もそこを目指して中卒業後単身渡米したので。
このコロナ禍という状況の中で、世界チャンピオンになれたことは大きな自信にも繋がりました。
世界を獲ったここからがスタートです。
フライ級は偉大な先輩たちが築いてきた歴史があるので、僕もさらに実績を重ね世間に認知してもらい、そしてボクシングを見て何かを感じてもらえると嬉しいですね。
目標はタイトル防衛
──同じフライ級で戦ってみたい選手はいますか。
中谷:意識しているのはWBOのアジアタイトルを持っている山内涼太選手(角海老)です。可能性があれば戦ってみたいですね。
──まずはWBOのタイトル防衛ですね。たとえば統一戦、WBCがマルティネス選手、IBFがムザラネ選手、WBAがダラキアン選手ですが、意識している選手はいますか。
中谷:他団体のチャンピオンはやはり意識していて、一番嫌な相手はマルティネス選手ですね。結構ぐいぐい前に来るタイプなので。
パンチが当たれば調子よく試合は進んでいくと思いますが、巻き込まれた場合にどうなるか……。
どういう場面でどう試合を組み立てていくか。それは僕がもっと成長しなければいけない部分でもあるのですが。
なので、マルティネス選手と戦うと、もっと成長できると思います。
──井岡一翔選手や井上尚弥選手、比嘉大吾選手や田中恒成選手もそうですけれども、階級を上げていく選手が多いですよね。
中谷:体が大きくなり階級が上がっていくのは必然だと思います。
どんな状況でもしっかり調整して試合で勝つこと、そして、いまは防衛していくことに価値を見出しています。
具志堅さんの記録(13戦防衛)を越えるのも目標の一つですね。
中谷潤人(なかたに・じゅんと)
三重県東員町出身。23歳。現WBO世界フライ級王者。M.Tボクシングジム所属。戦績は21戦21勝16KO。令和初の世界王者。