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井岡一翔が田中恒成を圧倒しKO防衛 史上最高の日本人対決の勝敗のポイントとは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供FUKUDA NAOKI

31日にWBOスーパーフライ級タイトルマッチが大田区総合体育館で行われ、4階級王者の井岡一翔(Ambition=31)が3階級王者で同級1位で挑戦者の田中恒成(畑中=25)と戦った。

この試合は複数階級を達成した王者同士の対戦で、史上最高の日本人対決と言われていた。

3度のダウンを奪い圧倒

試合では、ジャブを機転に攻める井岡に対して田中はアグレッシブに前に出た。

序盤は激しい両者のペースの取り合いが続いた。

徐々に井岡が中間距離でジャブをつき間合いを制していく。

田中も時折クリーンヒットを奪うが、試合運びが巧みな井岡がペースを握っていった。

田中も強引に前に出ようとするが、井岡の懐が深くなかなかパンチが当たらない。

そして、第5ラウンドにはフックの打ち合いで田中がダウン。

続く6ラウンドにも同じタイミングでダウンを奪われた。

苦しい展開の田中は、強引に前に出て井岡のボディを叩いて活路を見いだしにいく。

井岡はダウンを奪って余裕が出てきたのか、左右に動きながら田中にパンチを集める。

そして、第8ラウンド。

井岡の右からの返の左フックが炸裂し、田中が崩れ落ちたところで、レフリーが試合をストップ。

井岡が田中の4階級制覇を阻み、WBOタイトルの2度目の防衛に成功した。

勝敗のポイント

今回の試合では、井岡の試合運びが巧みだった。

ここ数戦はアグレッシブに前に出て自分から攻める試合が多かったが、今回は距離を取り本来の持ち味であるテクニックを駆使して戦った。

井岡は相手の呼吸を読むのがうまく、パンチを当てるタイミングが絶妙だ。

得意の左ジャブはモーションがないので非常にタイミングがわかりづらい。

角度やタイミングをずらして打ち込むため、田中もパンチがくるタイミングが読めなかった。

中間距離で両者が見合っている時に井岡がジャブをつき、田中の攻勢にストップをかけていた。

また、これまでこの階級で戦ってきたプライドと意地もあっただろう。

井岡はスーパーフライ級で5試合戦っている。

元王者のドニー・ニエテス(フィリピン)やアストン・パリクテ(フィリピン)、ジェイビエール・シントロン(プエルトリコ)などスーパーフライの強豪と拳を合わせてきた。

この階級で勝つか負けるかのギリギリの戦いをこなしてき井岡と、今回が初のスーパーフライ級での戦いだった田中とで、キャリアの差が大きく出た。

今後に向けて

井岡は試合後のインタビューで、「格の違いを見せると言い続けてきたので、結果で証明できたことがよかった」と語った。

海外では、田中の方が評価が高かったが、それを圧倒的な結果で覆した。

ダウンを奪った左フックは、田中の勢いを止めるのに十分なパンチだった。

また、戦った田中に対して、「田中選手はこれからの選手。これからボクシング界を引っ張ってくれる存在」とエールを送った。

敗戦した田中だが、まだまだ若いしこれからがある選手だ。今回の敗戦を糧にして、また頑張ってほしい。

今後の井岡はこの階級の統一に向けて、進んでいくことになりそうだ。

この階級には全階級最強ランキングにも名を連ねるファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)や4階級王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)がいる。

両者は今年の3月に対戦する予定で、その勝者との対戦を熱望している。

「あとどれだけボクシングを続けるかわからない」と試合後に話した井岡のキャリアも、終盤に差し掛かっている。

日本のボクシング界の歴史を作ってきた、井岡一翔の最終章に注目だ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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