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なぜ最強王者ロマチェンコは負けたのか 新世代のロペスがライト級初の4団体統一王者へ

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

10月17日ラスベガスでライト級4団体統一戦が行われ、3冠王者(WBC、WBA、WBO)のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と、IBF王者テオフィモ・ロペス(アメリカ)が対戦した。

ライト級では初の4団体統一戦で、勝者はボクシング史上5人目となる4団体統一王者となる試合に世界中から注目が集まった。

試合の展開

試合がはじまるとロペスがプレッシャーを掛けて手数を出していく。ロマチェンコは様子見といったところだ。

パワフルなパンチを放つロペスに対し、ロマチェンコは左右に動きながら慎重に動いている。

中盤になると、ロマチェンコも攻勢を仕掛けていくが、ロペスとの距離が遠くペースを掴めない。

中に入りたいロマチェンコと、距離を取りたいロペス、互いにペース争いを繰り広げる。

ときおりロマチェンコが入ろうとするが、ロペスが放つ右アッパーを警戒し入りきれない。

ロペスはボディにもパンチを集めロマチェンコの勢いを止めていく。

ロマチェンコのパンチもクリーンヒットするが、ロペスの勢いは止められない。

後半でもロペスのパンチの威力が衰えず、ロマチェンコも思うように戦えないようだ。

最後は距離がつまり、互いにパンチを集めたが決着はつかず判定へ。

3-0(116-112 119-109 117-111)の判定で、現役最強と言われるロマチェンコを下し、ロペスがライト級初の4団体統一王者となった。

勝敗のポイント

ロマチェンコは1年2ヶ月という長いブランクがあったからか、慎重すぎる立ち上がりが仇となり、ロペスにペースを奪われてしまった。一度ペースを取られると取り返すのは困難だ。

また、体格差も勝敗を分けるポイントになった。

ロマチェンコは身長170cmリーチ166cm、ロペスは身長173cmリーチ174cm、ライト級で減量がきついロペスとスーパーフェザー級でも戦えるロマチェンコでは2階級ほどの差がある。

計量を見ても余裕があるロマチェンコとギリギリのロペスが印象的だった。

リング上で向かい合ったロマチェンコは予想以上に体格差を感じただろう。

そして今回の試合で注目したいのが両者の距離感だ。

ロペスと対戦経験がある元OPBF東洋太平洋ライト級王者の中谷正義(31)は「ロペスはディフェンスに長けた選手だ」と評価している。

長身の中谷がやりづらさを感じるほど、ロペスとの距離が遠くパンチが当らなかったようだ。

試合でも攻撃・防御を可能にする絶妙な距離感を保ち、巧みな技を持つロマチェンコを入らせなかった。

手数と攻勢のロペス、パンチの的確性のロマチェンコ、ジャッジがどちらを評価するかが勝敗の決め手となった。

クリーンヒット数はロマチェンコだったが、ペースを握っていたのはロペスだった。

SNS上では判定に対する議論もあるが、ロペスの気迫がジャッジに影響を与えたのだろう。

今後のライト級

ロペスは試合後のインタビューで「勝つためにプレッシャーをかけ続け私が勝ち取った。ニュージェネレーションが誕生した。階級を上げてもいいしヘイニーもいる」と答えた。

ライト級4団体を統一したロペスだが、この階級は全階級の中でも層があつい。

本来であれば、一つの団体に1人の王者が望ましいが現在3名の王者が君臨している。

WBC正規王者 デヴィン・ヘイニー(アメリカ)

WBAレギュラー王者 ガーボンタ・デービス(アメリカ)

WBA暫定王者 ローランド・ロメロ(アメリカ)

また、他にもスター候補と期待されるライアン・ガルシア(アメリカ)や元3階級王者のホルヘ・リナレス(35=帝拳)もいる。

世界最強ボクサーと言われるロマチェンコを下したことで、ロペスがこの階級のトップに躍り出た。

減量がキツく近く階級を上げると噂されるロペスだが、今後の動向に注目集まる。

新星のスター誕生でますます中量級が盛り上がっていくだろう。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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