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究極の対決 異次元の強さ井上尚弥VSボクシング界の伝説ドネア

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供全て FUKUDA NAOKI

11月7日さいたまスーパーアリーナで、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)決勝戦が行われる。

WBA &IBF世界バンタム王者の井上尚弥(26=大橋)が、世界5階級王者のノニト・ドネア(36=フィリピン)と戦う。

井上は18戦全勝(16KO)の戦績を誇り、モンスターという異名を持つ。対するドネアは5階級制覇をした伝説的な王者だ。

井上尚弥の強さ

井上尚弥は「何が凄い」のか。KO勝利がほとんどで、これまで判定で勝利した試合は2試合のみとなり、苦戦している姿を見たことがない。

ダウンはおろか、パンチがクリーンヒットしたことがあるのか、思い出すのも難しい。

実際に手合わせをした選手に話を聞いたが、スパーリングでも数々の伝説を残している。

小國以載(元IBF世界スーパーバンタム級王者)

「パンチが見えない、最初に面喰ったらもう無理です。井上くんは次元が違う。マジで殺されるかと思いました」

杉田ダイスケ(現WBAアジアスーパーバンタム級王者)

「気づいたら床が目の前にありました。あとで聞いたら、前のめりにカウンターで倒れたようです」

また、チームメイトからは以下の証言があった。

須佐勝明(ロンドン五輪日本代表 元チームメイト)

「ピンポイントに標的に当てる当て感がすごいです。距離があっても完璧」

八重樫東(世界3階級王者 同門の大橋ジム所属)

「24時間ずっと強い。普通のボクサーは試合に向けてテンション上げてくけど、尚弥はずっとすごい。いつ戦っても強い」

ボクサー達からも絶大な評価を受けている。

現役最強を決めるPFPランキング(全階級で誰が一番強いか)では、2位にランクされ、日本人ボクサー過去最強との呼び声も高い

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レジェンド ドネアについて

井上が今回対戦するノニト・ドネアは非常に手強い相手だ。これまでの対戦相手の中で一番の強敵となる。

ドネアは、フィリピン出身のボクサーで、フライ級からフェザー級まで5階級を制覇した偉大な王者だ。(アジアではパッキャオに続き2人目の快挙)

フィリピーノフラッシュ(フィリピンの閃光)と呼ばれ、キャリア18年で45戦40勝(26KO) 5敗の戦績を誇る。

井上の2倍以上のキャリアと、軽量級ながら1発で試合を終わらせるパワーを持つ。

得意としているパンチは左フックで、数々の相手を一撃で沈めてきた。

年齢は36歳。キャリアの終盤となるが、パンチのキレも衰えていない。

また、2つ上のフェザー級でも戦い、今回階級を下げてきたためパンチへの耐性はあるだろう。

両者の距離感がポイント

パンチ力が注目される井上だが、余計なパンチをもらわない「鉄壁のディフェンス」にも優れている。

足を使った出入りが早く、打ったらすぐに離れて相手の射程距離から消える。

ヒットアンドアウェイでパンチをもらわない理想的なスタイルだ。

また、パンチをヒットさせる「当て感」も非常に優れている。強いパンチを絶妙なタイミングで打ち込める。

右でも左でもKOに繋がるパンチが打てるので、相手は常に気が抜けない。

今回の試合では、両選手ともパンチ力があるため、お互いの「距離感」が重要になってくる。

自分のパンチが当たり、相手のパンチをもらわない絶妙な距離感を掴んだ方がペースを握る。

そのためにもジャブを多くつくような、慎重な戦い方が求められるだろう。

両者共に前半で倒す実力があるので、目が離せない展開となりそうだ。

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激戦のバンタム級

日本人選手が、これほどの大舞台でリングに上がる機会はなかった。

歴代王者の中でも井上ほど世界的に注目されているボクサーは他に類を見ない。

現在2つのベルトを持つ井上だが、バンタム級は、以下の王者が君臨している。

WBA レギュラー&IBF   井上尚弥

WBA スーパー ノニト・ドネア(フィリピン)

WBC 正規 ナルディーヌ・ウバーリ(フランス)

WBC 暫定 井上拓真 (23=大橋)

WBO 正規 ゾラニ・テテ(南アフリカ)

WBO 暫定 ジョンリル・カシメロ(フィリピン)

バンタム級は軽量級の中でもタレントが集まり、ライバル達がしのぎを削っている。

今回の試合では、弟の井上拓真がウバーリとタイトル統一戦を迎える。

また、WBOの正規王者のテテと暫定王者のカシメロは11月30日にイギリスで対戦する。

王座が次々と統一され、バンタム級最強を懸けた戦いが進んでいく。

井上が今回の試合に勝てば、ますます注目されるだろう。

舞台が大きくなればなるほど、選手には多大なプレッシャーが掛かる。そんな重圧を跳ね除けて勝利を掴んで欲しい。

日本のボクシング界を牽引する井上尚弥。彼の勝利に期待したい。

世界が注目するビッグマッチまで残りあと僅か。試合は、11月7日(木)19時57分からフジテレビで生中継される。

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元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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