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アマチュアボクシング 東京五輪に向けてプロ選手も参加で激戦の代表争いへ

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
世界選手権で成松大介選手 写真提供全て 日本ボクシング連盟 

東京五輪まであと一年を切った。今年の6月に五輪種目として正式決定となったアマチュアボクシングだが、今回からプロ選手も参加可能となった。

出場選手は引退している選手に限られており、予選大会には元世界王者も出場している。

東京五輪に向けて、日本ボクシング連盟の菊池浩吉副会長、広報戦略委員長の井崎洋志氏に話を聞いた。

全日本選手権が登竜門

ーーー今回から東京五輪でボクシングのプロ選手が参加しますが、その影響は何かありますか?

菊池:特にありません。日本でオリンピックに出ようと思ったら全日本選手権を制するしかないです。挑戦する選手を応援していきたいです。

ーーー元世界王者の高山勝成選手(36=主要四団体で世界王者)や元自衛隊の佐藤幸治選手(38=元OPBF東洋太平洋ミドル級王者)などが出ていますね。

(高山選手は、ブロック予選敗退。佐藤選手は本戦出場)

他にも何人か出ているのでしょうか?

菊池:キックボクシングの世界チャンピオンの松田玲奈選手がいますね。

ーーー今のところはその3名だけですか?

井崎:そうですね。元ロンドンオリンピック代表の鈴木康弘選手(31)も出ています。

ーーー北海道で出ていましたね。

井崎:強かったです。全然ブランクを感じませんでした。

ーーー彼はオリンピックにも出ていますからね。何級で出ているのですか?

菊池:ウェルター級です。

ーーーでは今度の全日本選手権は、かなり激戦になりそうですね。

菊池:はい。新旧の選手が交わって、話題性には富んでいると思います。

ーーー全日本選手権のメンバーが決まるのはいつ頃になりますか?

菊池:各県で予選が終わってブロックの予選をしていますので、9月の頭には全部出そろう感じですね。

そこから上がってきて11月の試合です。

プロとアマチュアの違い

ーーー私もプロ、アマチュアどちらもやっていましたが、具体的にプロとアマの違いはどのように思われますか?

菊池:陸上競技で例えますと、3000メートルの選手と800メートルの選手が同じところで試合するのと一緒です。

なので、3000メートルのところでは当然勝てないと思いますし、逆にしても難しいと思います。

ーーーそうですね。プロの世界チャンピオンクラスでも、アマチュアになるとまたルールが違う中で戦わなければいけないので。

菊池:そうですね。グローブも違いますし。

ーーーアマチュア専門のグローブだと、なかなかパンチが効かせられない、と聞きますがいかがでしょうか。

菊池:そうですね、握りにくいというのはいまだに聞きます。ですが、だいぶ改良はされてきました。

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注目のボクサー

ーーー日本選手団の話を聞きたいのですが、注目の選手はいますか?

菊池:岡澤セオン(鹿児島県体育協会)ですかね。

まだ、代表経験は浅いですが、2019年アジア選手権銀メダルを獲得し、9月にロシアで行われている世界選手権の代表にもなっています。

元々ディフェンスは上手かったんですが、このところ攻撃力が伴ってきました。

ポテンシャルはトップクラスの選手なので、来年のオリンピックもメダル圏内だと考えています。

ーーー他にも、リオデジャネイロオリンピック男子ライト級で出場した成松大介選手(29)や、重量級の森脇唯人選手(23)などもいますね。

菊池:成松選手はピークを超えたのではないかと言う人もいます。

しかし、本人自身が最後のオリンピックになる可能性がある、ということを言っていますので思い入れか違います。

ですから私たちは、そういう気持ちや経験にかけたい気持ちもあります。

アジア選手権でも銅メダルを取っていますので、彼にメダルを期待したいと思います。

メダルの可能性

ーーーそうですね。全体的にメダルの可能性はどうですか?

菊池:男子は金を1つ取りたいです。銀か銅をもう1つ、複数メダルを取りたいです。

女子は金を目指せると思います。世界選手権で3位になっていますし、カザフスタン大統領杯でも金メダルを取っています。

ーーー並木月海選手(21)ですね。何級ですか?

菊池:フライ級です。21歳とまだ若いので次世代でもいけますね。今回の予選、女子はみんな強くて、気迫がみなぎっていました。

どれほどメダルにかけているのかが、伝わってくるような試合でした。

ーーーぜひメダル取ってほしいです。

菊池:可能性は大いにあると思います。

ーーー男女の世界選手権がありますが、世界と日本の差はどのぐらい離れているのでしょうか?

菊池:アメリカ合宿に行ったときもそうでしたが、男子はウズベキスタンやアメリカの選手も骨格のしっかりした選手が重量級にいます。

日本のチャンスは軽量級から中量級なのではないかと思いますが、その階級においてはどこにでも通用するものを持っています。

女子の場合は、まだ決まっていないので並木と言っては、いけないのかもしれませんが、彼女はどこよりも優れている部分を持っています。

とても小さくて相手はみんな背が高いのですが、彼女と打ち合うのをとても嫌がります。

スタミナもありますし、戦略も試合が進むごとに変えていっているのもわかります。

賢いボクシングができるのでとてもいいと思います。女子は苦手意識を持っていない感じがしますね。

ーーーでは、女子はレベルがみんな同じぐらいなのですね。

菊池:でも重量級になると経験がないので、全日本選手権もそうですが、女子の場合は上の階級は試合が無くて、認定であったりします。

経験はないのですが、ポテンシャルのある子がいるので、もっと早くから発掘するべきだったという後悔が少しあります。

今からでも、経験させたいと思って合宿には呼んでいます。

ーーー男子のほうはここの国が強いというのはありますか。

私のときですとキューバやロシアが強かったのですが、今はリオを見ていてもそんなに独占しているところは少ないのではないですか。

菊池:ウズベキスタン、カザフスタン、旧ソ連は強いですね。モンゴルも強いです。女子は北朝鮮も無茶苦茶強いです。

国別が男子、女子が分かれている部分はありますが、強いのがありますし、国別ではなく個人的に強い子がいたりします。

アメリカには無敗の子がいますね。

男子の世界選手権は、現在ロシアで開催中で、残念ながら日本勢は全員敗退。結果は岡澤選手がベスト8、成松選手がベスト16となった。

ここから11月の全日本選手権に向けて、熾烈な代表争いを賭けた戦いが始まる。

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元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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