内山高志「試合は常にしたい」引退して3年 今だからこそ語る真意とは
7月6日都内某所にて、世界戦連続11度防衛を果たした、元WBA世界スーパーフェザー級チャンピオン内山高志氏(39=元ワタナベ)のトークイベントが行われ内山氏に話を聞いた。
注目しているボクサー
ーーー当時やってみたかった相手はいましたか?
内山:やってみたかったのはミゲル・アンヘル・ガルシア(アメリカ)です。
ーーー日本人選手では、戦ってみたかった選手はいますか?
内山:粟生隆寛(35=帝拳)とは1回やってみたかったですね。
ーーー今、注目している選手はいますか?
内山:やはり井上尚弥でしょう。
ーーー彼は、内山さんから見てどうですか?
内山:「強い」しかないです。
ーー一以前スパーリングをやるという話をしていましたよね?
内山:そうです。あれは去年かな。
ーーー去年ですか。
内山:焼き肉屋で一緒にご飯を食べていて、やろうという話になりました。ですが、結局やらなかったです。
僕が毎日酒を飲んでいるから、なかなか調子のいいタイミングがなくて。
一番嬉しかった試合
ーーー内山さんは、プロで30戦近くやられていますが、その中で一番嬉しかった試合はありますか?
内山:やはり世界チャンピオンになった時の試合です。
ーーー世界チャンピオンになった瞬間というのはどうでしたか?
内山:中学の時、僕が最初にテレビでボクシングを観たのが世界タイトルマッチだったので。
試合が決まった時点では、試合ができること自体が嬉しくて、その舞台に自分がいるということが信じられなくて、喜んでいました。
勝った時も嬉しかったけど、試合が決まった時の方が嬉しかったです。
ーーーその後、引退を決断されましたね。もう少しやろうという思いはなかったのですか?
内山:その時はもうないです。
ーーー完全にやり切ったという感じですか。
内山:もうやり切りました。反応も鈍っていたし、これ以上練習で追い込むのはきついと感じました。
手頃で行けそうな団体もまだありましたが、そこをあえて狙っていくというのも僕の中では嫌だったので、
結構長くやったし、負けたらきっぱりという感じでした。
それが、ずっとやってきた自分の生き方という感じでいいと思いました。
ーーー引退して3年になりますが、また試合がしたくなったり、やってみたいと思いますか?
内山:やはり、試合は常にしたいです。
ーーー常にしたいんですね。
内山:試合はしたいですが、試合に出るのであれば、しっかり追い込んで練習しないと失礼にあたります。
それを考えると、中途半端にリングに上がってはいけないと思います。
東京オリンピック
ーーー今、東京オリンピックでもプロが解禁になりましたが、それに内山さんが出たら本当に面白いと思います。
内山:アマチュアの時に、サボっているとどうなるかというのが分かっているので、無理です(笑)
ーーー3分3ラウンドですね。
内山:3分3ラウンドは結構きついです。
ーーーそうですね。逆に短いときついですよね。
内山:全力疾走ですから。
ーーー東京オリンピックについて何か想いはありますか?
内山:今のアマチュアボクシングの子達はとても強いです。
海外に行ってメダルを取ってくる選手が多いので、東京オリンピックは金メダルも出るのではないかと思います。
僕らの時は、まずオリンピックに出ることが大変でした。
ーーーそうですね。
内山:メダルを取るということが、すごく大変なことでした。
ーーー考えられなかったですよね。
内山:今の日本の子たちは結構強いので、ぜひそこに注目していただけたらと思います。
ーーー日本のプロのボクシング界のレベルも上がっていると思うのですが、それもアマチュアにつながっているような感じですか?
内山:ほかの国と比べても、日本は強くなってきています。
アマチュアからやっていた子がプロに多いということもあるし、全体的にどんどんレベルが上がっています。
ボクシングは究極の趣味
ーーー僕が高校生の時は、世界タイトルで1回防衛するのがとても大変な時代でした。
そこから、内山さんや山中さんが、10回以上も防衛をしていたので、その影響はすごくあると思います。
そういう平成の時代をつくってきたという思いはありますか?
内山:いえ、僕がつくってきたとは全然思っていません。ボクシングは趣味でやっていましたから。
ーーー趣味なんですか!
内山:趣味でやっていたから減量もしたくないし、好きなようにやりたかったです。
「家族のため」とか、「自分が勝たなかったら家族が」とか、ボクシングもいろいろありますけど、
それを言ったら、ほとんどのボクサーは家族を支えてないのではないでしょうか。
むしろ、家族のためを思うのなら、いつ死ぬか、怪我をするかも分からない危険なボクシングは、やめたほうがいいと思います。
だから、好きな人がやるべきです。僕は、ボクシングに対してはそこまで深く考えていなかったです。
もちろん絶対に勝たなければいけないという気持ちでやっていましたが、それは究極の趣味なので、絶対に負けたくないという気持ちが強かったのです。
だから、練習もサボったことはないし、常にきつい練習で追い込んだのも、1対1の勝負事に負けたくないという気持ちだけでした。
引退後の活動
ーーー今はボクシングをやるほうからジム経営になって、また少し違ったスタンスでボクシング界と関わっていますが、現状はどんな感じですか?
内山:言ってみれば、ジムも本当は趣味でした。引退してから、練習や筋トレをしたいと思ったときに、元のワタナベジムには行きづらかったです。
僕が行くと、後輩たちが結構気を使ってしまうからです。
リングを使って練習すると、僕は引退しているからいいと言っても、後輩たちはリングから下りてしまうので。
なんか気まずいと思ってだんだん遠のいてしまったときに、自分で動ける場所をつくればいいと思ったことが始まりでした。
最初は、こういう部屋にサンドバッグを吊るして、シャワールームを1~2個付けたぐらいでいいと思っていましたが、
作っているうちに、「もしお客さんが来たら」「これでは少し汚い」とか、シャワーやトイレもすごく気になって、どんどんジムが立派になってしまいました。
ーーーとてもきれいなジムで、駅からも近いですよね。
内山:本当は自分が動きたくて作ったけど、今は、お客さんに喜んでもらえて嬉しいという思いがあります。だから、作ってよかったなと思います。
ーーー最後に、内山さんと今後のボクシング界との関わりについては何かありますか?
内山:ボクシングが盛り上がっていくのであれば、僕もいろいろやっていきたいと思っています。
内山高志
第39代WBA世界スーパーフェザー級王者。通算成績27戦24勝(20KO)2敗1分
通称「KOダイナマイト」。その名の通り、日本歴代1位のKO率を誇るハードパンチャーである。
世界王座を11度防衛しており、これは日本歴代3位の記録である。
現在は、東京都新宿区四谷3丁目に「フィットネス&ボクシング KODLAB」をオープン。後進の育成に努める。