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パッキャオが大激戦で王座統一 勝利を引き寄せた渾身のボディブロー

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

7月20日(日本時間7月21日)アメリカのラスベガスのMGMグランドガーデンアリーナで、ボクシングのWBA世界ウェルター級王座統一戦が行われた。

6階級王者でWBA世界ウェルター級王者のマニー・パッキャオ(40=フィリピン)と、WBA世界同級スーパー王者で無敗のキース・サーマン(30=アメリカ)が戦った。

パッキャオがいきなりダウンを奪う

試合が始まる前から会場の雰囲気は「パッキャオ」だった。

対戦相手のサーマンが、ブーイングの飛び交う中入場したのに対し、パッキャオは、多くのファンからの大歓声の中入場した。

40歳を超えるパッキャオだが、依然としてアメリカファンからの人気が高い。また、世界中のボクサー達から、絶大な支持を集めている。

会場には、元5階級王者のフロイド・メイウェザーも足を運んでいた。そして大観衆の中、試合開始のゴングが鳴った。

サウスポースタイルのパッキャオに対し、右構えのサーマンは、左で間合いを測りながら、距離を詰めようとする。

パッキャオが飛び込みながら打つパンチには、迫力がある。それを警戒してか、サーマンも迂闊に中に入れない様子だ。

試合が動いたのは、1Rの終盤。

パッキャオが飛び込みながら打ったストレートの返しのフックが当たり、サーマンがダウン。

このラウンドは凌いだが、パッキャオは、このパンチで流れを掴んだようだ。その後、積極的に前に出て、試合を有利に進めていく。

前半はパッキャオペースで試合が進んだが、中盤になると、サーマンも距離を掴んできたのか、パッキャオの前進をいなしていく。

離れた距離になると、体格に勝るサーマンが優位に試合を進めていた。

ボディブローで流れを引き寄せる

接近戦のパッキャオ。長距離のサーマン。お互いが得意な距離に持ち込もうと、激しいペース争いが繰り広げられる。

アグレッシブに攻めるパッキャオに対して、サーマンは的確なパンチで、パッキャオの顔面にパンチを集めていく。

お互いの持ち味を活かし、大激戦となった。

後半になると、流石のパッキャオも疲労してきたのか、動きが落ちてくる。

すると、サーマンが長い距離を活かしてポイントを稼ぎ、流れを引き寄せてくる。

しかし、第10ラウンドにパッキャオが放った左レバーブローが、サーマンに直撃し、ダウン寸前の苦しい展開になる。

ボディを打たれると、呼吸ができなくなりスタミナにも影響する。

後半になって、サーマンがペースを握り始めた時だっただけに、このパンチは非常に効果的だった。

パッキャオが、一発のパンチで流れを変えた。

最終ラウンドでは、お互いに出し尽くし、ゴングがなった。

判定では、2−1(115対112、115対112、113対114)でパッキャオが勝利し、WBAの王座統一に成功した。

40歳とは思えない動きのパッキャオが、無敗のキース・サーマンに初黒星をつけた。

今後のパッキャオ

パッキャオは、40歳になっても最前線で戦い続けている。

フィリピンの上院議員でもあり、大統領候補とも言われる彼は、アスリートの枠を超えたレジェンド的な存在だ。

今回の試合でも、多くのファンの期待を背負い戦っていた。

パッキャオが入場するだけで、ワクワクする。そんな存在感のある選手は、なかなかいないだろう。

次戦の相手として、元WBA・IBF世界スーパーライト級王者アミール・カーン(英国)との対戦が発表されたが、パッキャオ陣営は否定している。

他にも、対抗王者のIBF王者エロール・スペンスJr(米国)からは、統一戦を呼びかけられている。

本人は否定はしているが、5階級王者のフロイド・メイウェザーも候補に上がっている。

今回の試合を見ても、まだまだトップクラスと戦える。人々に必要とされる限り、戦い続けるのではないだろうか。

パッキャオを超える、スター誕生にも期待したい。政治家としての顔を持つパッキャオの次戦は、来年以降になりそうだ。

年齢を超越したパッキャオの挑戦は続いていく。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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