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拳四朗「ベルトを集めにかかりたい」タイトル統一に向けて6度目の防衛戦

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真 全て本人提供(FUKUDA NAOKI撮影)

12日にエディオンアリーナ大阪で、ボクシングWBC世界ライトフライ級タイトルマッチが行われる。

チャンピオンの拳四朗(27=BMB)が、同級1位のジョナサン・タコニン(32=フィリピン)を迎え、6度目の防衛戦に臨む。

拳四朗は、国内の世界チャンピオンの中で最多の防衛回数を誇る。

初の凱旋試合

京都出身の拳四朗は、世界王者になって初めての凱旋試合となる。これまで、全ての試合が関東で行われていたため、関西での試合は初めてだ。

当日の会場には、1000人を超える応援団が訪れるようで、東京からも熱い応援団が300人以上集まる。

「モチベーションが上がる。いいところを見せたい!」と張り切っている。やはり、地元での防衛戦は嬉しいだろう。

ホームであれば、たくさんの応援団が試合に訪れ、選手にとって、大きなモチベーションになる。

拳四朗は、2017年5月に世界タイトルを獲得してから、5度の防衛を果たしている。最近は、王者としての貫禄が出てきた。

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拳四朗のボクシングスタイル

彼のボクシングは、素早いフットワークを活かした、打たせずに打つ「ボクサーファイター」だ。

ストレート主体で、出入りを活かしながら、自分の距離で戦うのを得意とする。また、一発で倒す強いパンチもあり、5度の防衛戦のうち3度はKO勝ちだ。

以前、私は拳四朗の練習を見学して、そのパンチをミットで受けたことがある。

実際に対峙すると表情が変わり、迫力があった。

その優しい顔つきからは、信じられないほどのパワーを持っていた。

特に、踏み込みを活かした右ストレートは、体重が乗っていて、相手を一撃で仕留めるほどの威力がある。

前回の試合では、KOを意識するあまり、後半の動きが雑になり、パンチをもらう場面もあった。

だが、いいタイミングでパンチを打つことができるので、相手が効いた時に連打が打てれば、KOに繋がっていくだろう。

高いKO率を誇る挑戦者

今回の相手タコニンは、サウスポースタイルの強打者だ。ここまで、32戦28勝(22KO)3敗1分の戦績を誇る。

軽量級では、非常に高い80%近くのKO率を誇る。また、これまでKO負けの経験がない。

特徴は、左ストレートとフックが得意で、アグレッシブに攻めてくる「ファイタータイプ」だ。

一度攻め始めると、手数が止まらなくなるため、勢いに乗らせるとやっかいな相手だ。

拳四朗は昨年5月、防衛戦前のフィリピン合宿で、タコニンとスパーリングをしたことがある。

序盤は打ち合いで押されたが、後半は距離をとって優位にたったという。

一度拳を交えているので、相手のスタイルや印象などは、イメージしやすいだろう。

サウスポーが相手になると戦い方が大きく変わるため、苦手とする選手は多い。

だが、拳四朗は、サウスポーの前王者ガニガン・ロペスをボディ一撃で倒している。

左構えの相手に、苦手意識はないだろう。

今回の作戦について、「中盤から後半にかけて自分のペースに持っていきたい」と話している。

相手に勢いがある序盤に気をつけて、中盤以降にペースを掴んでいきたいところだ。

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統一戦について

この階級には、同じ日本人王者の京口紘人(25=ワタナベ)がいる。拳四朗は、6月に行われた京口の防衛戦の会場に足を運んでいた。

その際、本人に話を聞く機会があった。今回の防衛戦後の展望について「統一戦はしたい。ベルトを集めたい」と話していた。

目標は具志堅用高氏が持つ、タイトルの防衛回数記録13回を塗り替えることのようだ。

そのためにも、今回の試合は負けられない。拳四朗も「無傷で圧勝する」をテーマに試合へ向かう。

この階級では、もっとも注目度が高く、国内外から対戦オファーも届いているようだ。

国内のボクシングでは、統一王者の井上尚弥を筆頭に、4階級制覇を果たした井岡一翔、世界最速3階級王者の田中恒成など、強豪王者がひしめく。

日本のボクシング界もレベルが上がり、「勝つ」だけでなく、「勝ち方」まで問われる時代になった。

その中でも、国内最多の防衛回数を誇る拳四朗への注目度が高まっている。

今回の試合は、WBCから義務付けられている、ランキング最上位選手との指名試合だ。

最強チャレンジャー相手に圧勝すれば、次のステップとして、統一戦への期待も高まる。

王者の威厳を見せつけ、圧倒的な勝利に期待したい。

拳四朗の試合は、7月12日(金)に『FUJI BOXING WBA世界ミドル級タイトルマッチ』として、フジテレビで20時から生放送される。

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元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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