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パッキャオが【仮想メイウェザー】ブローナーに判定勝ち どうなる再戦の行方

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
パンチを打ち込むパッキャオ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6階級王者のWBA世界ウェルター級王者マニー・パッキャオが、元4階級王者の同級6位エイドリアン・ブローナーを相手に、アメリカラスベガスのMGMグランドガーデン・アリーナで初防衛戦を行い、3-0の判定勝ちで勝利した。

 パッキャオはこの試合が70戦目で、40歳になってから初めての試合を勝利で飾った。

仮想メイウェザーのブローナー

 相手のブローナーは、パッキャオと再戦が噂されるメイウェザーにスタイルが似ている。

 前の手をだらりと下げたL字ブロックで、相手に左顔面を晒す。このスタイルは、リラックスしてジャブが打てる反面、顔がガラ空きになるのでパンチをもらう危険性がある。そのため、目が良くてディフェンスが優れている選手しか使えない。

 メイウェザーもそうだが、ブローナーもこのスタイルだ。前の手をだらりと下げてジャブを打ち、スピードとタイミングが良く反応も速い。

仮想メイウェザーにもってこいの相手だ。素行は悪いが、ボクシングの実力はトップクラスで4階級を制覇している。

パッキャオの手数とプレッシャー

 試合では序盤からパッキャオがプレッシャーを掛けていった。時折ブローナーも手数は出すが、積極的に攻勢を見せるパッキャオがペースを握っているようだった。

 体の厚みもあり、同階級のブローナーよりひとまわり大きい印象だ。ボディを織り交ぜ、積極的に攻めていった。ブローナーもパッキャオの圧力を予想以上に感じているようで、ディフェンシブな戦いとなる。上手さはあったが、ペースを引き寄せるほどの明確な決め手はなかった。

 7Rにはパッキャオが攻勢に出て、ダウン寸前まで追い詰めた。ブローナーはなんとか逃げ切った。後半になると少し疲れを見せたパッキャオだったが、積極的に前に出てポイントを奪いにいった。手数でペースを握った。ただし同時にやりづらさも感じていたため、KO決着とはならなかった。

パンチは下半身で打つ

 パッキャオの強さはその強靭な下半身にある。鋭い踏み込みで相手との距離を潰し、得意のストレートを打ち込む。そこから、連打に繋ぎKO勝ちを収めてきた。

 最近はKOから遠ざかっていたが、前回のタイトル戦で、チャンピオンのマティセを3度倒してKOで王座を獲得した。

 パンチは手で打つように思われるが、実際は下半身からの連動で打つ。重心移動のエネルギーが体幹を通じて、拳に伝わる。パッキャオの場合は体ごとぶつかっていくので、その衝撃は凄まじい。

メイウェザーとの再戦はどうなる

 試合後のインタビューでは、メイウェザーとの対戦にも話題が及んだ。メイウェザー自身も会場に足を運んでいて、パッキャオ戦を視察に訪れていた。

 モニターに一瞬映し出されたが、コメントはなかった。試合前には、メイウェザーがパッキャオの控え室を訪れ激励している動画が、パッキャオのツイッターで公開された。その様子を見ると、メイウェザーも再戦に好意的な様子だ。

 今回の試合を見てメイウェザーはどう思っただろうか。パッキャオの運動量、手数、アグレッシブさはまだまだ健在だ。もし、再戦が決まったらそれ相応の準備をしないと厳しい。

 ボクシングから引退して2年経つメイウェザーと、まだまだ第一線で戦い続けるパッキャオの実力は拮抗しているだろう。試合が決まれば、前回と同じような内容にはならない。実力を戻してきているパッキャオは、メイウェザーにとってリスクが高く決してあなどれない相手だ。

 マネーと呼ばれるメイウェザーだが、巨額の金額が動くのであれば再戦にも乗ってくるだろう。個人的にはぜひとも見たい試合だ。再戦から4年近く経つが、まだまだボクシング界はこの両者の話題で持ちきりだ。しかし、気まぐれな選手であるがゆえに先行きは不透明だ。今後も主役であり続けたいメイウェザーの動向から目が離せない!

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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