幻の対戦がついに実現!田中恒成が田口良一を迎えて初防衛戦

田中恒成と田口良一の記者会見

 日本最短で3階級を制覇したWBO世界フライ級チャンピオンの田中恒成が、元WBA&IBF世界ライトフライ級統一チャンピオンで、現WBOフライ級4位の田口良一と3月16日に岐阜メモリアルセンターで対戦する。

 両者は2017年大みそかに、ライトフライ級での王座統一戦を行う方向で対戦が内定していた。しかし、田中が2度目の防衛戦で両目眼窩底骨折を負いキャンセルした経緯がある。

 今回階級を上げてフライ級で王者となった田中が、田口を挑戦者として迎える。田口は前回の試合で南アフリカのベッキー・ブドラーの変則的なリズムにペースを崩され、持ち味を活かせず判定で敗れベルトを失った。

 その後は進退を保留していたが、ひと階級上げて田中へのチャレンジが決まった。田中は前回のベルトを奪った木村翔戦から、再び日本人の強豪を相手に防衛戦に挑む。

記者会見の様子
記者会見の様子

田中は負けず嫌いの性格

 私は両者と戦った経験がある。アマチュアエリートとしてデビューした田中とは、彼がプロに入ってから間も無く実戦練習のスパーリングをした経験がある。まだ経験が浅く、プロでの戦いに順応していなかった。

 アマチュアからプロに転向したばかりの選手は長丁場の戦いと、プロ独自のリズムに慣れていない。そのため、相手が嫌がる近い距離での戦いで田中のリズムを崩していった。最初のスパーリングでは、私がペースを掴み有利に戦うことができた。

 しかし、その次のスパーリングでは驚くこととなった...。

 前回と同じ方法で戦った私に対して、田中は戦い方を大きく変えてきていた。対応策としてサイドに巧みに動かれ、スピードのある田中を捉えることができなかった。前回とは違う展開となり、今度は私がリズムを崩され田中にペースを握られた。短い期間での修正力とボクシングの幅の広さに驚いた。

 輝かしい戦績を持つ田中だが、その裏側には飽くなき探究心と負けず嫌いの性格を持ち合わせている。穏やかそうに見えるが、内に秘める闘志は熱いものがある。今回も強い相手を求めて、非常にリスクのある戦いにチャレンジする田中の姿勢にはボクサーとして尊敬に値する。

相手に恐怖を感じさせる闘争心

 田口とは、2011年に日本王座挑戦権を賭けた最強後楽園で対戦した。試合前に記者会見があり、顔を合わせる機会があった。正直な印象としては口数が少なく、おとなしそうで、強そうには見えなかった。見た所「気の弱い青年」のようだった。

 しかし、リングで対峙した時の印象はガラリと変わった。向かい合うと、獰猛な動物のように目が変わり、闘争心を剥き出しにして私に向かってきた。殺気を身にまとい、戦いに飢えているように見えた。私はプロで20戦ほどしているが、リング場で私に恐怖を感じさせたのは田口だけだった。

 試合の方は私が途中で目の上をパンチでカットして負けた。試合が終わって、その恐怖から解放され安堵する自分がいた。見た目とギャップがあるが、強い闘争心を持っている。ボクシングスタイルからは分かりづらいが、リングで対峙した者にしか分からない強さを持っている。そうでないと、世界タイトルを7度も防衛することはできない。

 挑戦者たちを追い込んだ、田口の闘争心は侮れない。ライトフライ級では減量苦だった田口だが、階級を上げたことが大きなプラスになるだろう。

世界チャンピオンからの目標

 この試合の勝敗を予想することは、非常に難しい。田中のスピードか、田口の粘り強さか。どちらがペースを先に掴むかがポイントになる。また、立場も影響してくるだろう。王者としてベルトを守り続ける立場より、チャレンジャーとしてリングに立つ田口のモチベーションの方が高いだろう。田中も強い相手を求めており、戦いたかった相手との試合は楽しみだろう。

 ひと昔前なら、ボクサーのゴールは世界王者になることだった。しかし、今の選手達は世界チャンピオンになってからがスタートになっている。井上尚弥を中心に、田中恒成、拳四朗など活躍しているチャンピオン達は、新しい道を切り開いている。非常に頼もしい限りだ。

 また最近は、選手同士がお互いに望んだ魅力的なカードが決まっていっている。選手の発言や要望が通り、マッチメイクに影響するのは非常に良いことだ。ファンも観たいカードだろう。選手のストーリーを知ることで、ボクシング観戦をより楽しむことができる。このカードが実現する価値をもっと多くの人に知ってもらい、ボクシングの魅力を感じてもらいたいものだ。